「お義母(かあ)さん、もう限界です。インフルエンザしつこいです!」
4歳の孫がインフルエンザにかかり、2歳の弟にうつり、パパにまで感染してしまったそうで、3人の病人を抱えたママからSOSが入りました。咳と鼻づまりで夜も眠れず、どちらかが泣くともう一人も泣き出すと言います。熱が下がって1週間たてば感染力はなくなるというので、上の子を一晩預かることにしました。
車で迎えに行き連れ帰ると孫は大喜び。時々苦しそうに咳をするものの、次から次へとおもちゃを取り出して遊びました。私が拍子木と紙芝居劇場を用意して紙芝居をしてあげると、幼稚園みたいだと喜んでいました。
ところが、夜ふとんに入ると咳が出始めました。咳をするたびに私は背中をさすり続け明け方まで寝られませんでした。小さな背中をさすりながら、ふと母のことを思い出しました。
小学生のころ母親に連れられて、母方の親戚の住む群馬県高崎市によく遊びに行きました。そこは大きな八百屋さんをしていました。八百屋さんというよりスーパーマーケットに近い感じで、私と弟はお店の隅から隅まで探検するのが大好きでした。大きなスイカの隣には見たこともない果物が並んでいます。駄菓子もたくさんあって、ビニール袋に入った綿飴がお気に入りでよくいただきました。
ある夏休み、やはり母と弟と3人で泊まりに行ったときのことです。プール遊びに夢中になりすぎたためか、私は夕食後熱を出してしまいました。おばちゃんが水枕を用意してくれました。母は洗面器に井戸の水を汲んできてタオルを絞り額に当ててくれました。具合が悪いと言いながら私はいつの間にか眠りについたのですが、気が付くと母はずっと座って団扇で私をあおいでくれていました。明日の朝には熱が下がるようにと、一晩中看病してくれたのです。その甲斐あって、私はすっかり元気になりました。ほとんど寝ていなかっただろうに、母はいつものように元気でした。
大人になってからも私はよく熱を出し、母にSOSをだしました。母はすぐに駆け付けてくれました。母の顔を見るとホッとします。孫の看病もしてくれました。痒い所に手が届くように看病してくれる母は、スーパー看護師です。母が具合が悪くなったら、今までの感謝の気持ちをこめてしっかり看病してあげようと思っていたのに、母はあっという間に逝ってしまいました。
孫のインフルエンザがうつったわけではありませんが、しばらくして私は風邪でダウン。喉が痛くなり声が出なくなってしまいました。
「お母さん、久しぶりにSOSです!」