雲ひとつない青空の下、元気に泳ぐ1,000匹あまりの鯉のぼり! すがすがしい5月の風をはらんで気持ちよさそうに泳いでいます。「やねよりたかーい こいのぼーりー」♪ 会場に流れる歌声に、思わず一緒に歌いたくなりました。いとおしそうに鯉のぼりを見上げる人、写真を撮る人も大勢います。東京都八王子市にある長房(ながふさ)市民センターの「長房ふれあい端午まつり」に行ってきました。使わなくなった鯉のぼりの寄贈を新聞などで呼びかけ、センターの横を流れる南浅川の両岸にワイヤー3本を渡し、鯉のぼりを取り付けて一斉に泳がせるというものです。1989年から始め、コロナ禍で2年間は中止、昨年は規模を縮小して開催しました。
今年は、軽食の屋台が出たこともあり、家族連れなどで大賑わいしていました。幼稚園や保育園の子どもたちがつくった鯉のぼりも飾られています。1,000匹もの鯉のぼりを泳がせるのは大変な作業だったことでしょう。倉庫で保管されている鯉のぼりは、擦り切れてしまったものは、繕ったり貼り付けたりと修理をしているそうです。大学ノート数冊に及ぶ寄贈者名簿も大切に引き継がれています。鯉のぼりとともに寄せられた手紙も宝物です。
「母が初孫の誕生を喜び送ってくれた鯉のぼり、団地の小さなベランダに泳ぐ鯉のぼりを見て子どもも大はしゃぎしていました。小さい物ですが、飾っていただければ嬉しいです」「亡きしゅうとめと二人がかりで上げ下ろしした鯉のぼりが、高尾山を背景に仲間と一緒に泳ぐ姿を見たら、しゅうとめも喜ぶことと思います」「元気にすくすくと成長してほしいと願う鯉のぼりですが、この鯉のぼりを飾った子は、もうこの世にはいません。捨てようか、どうしようかと思いながら、ずーっとしまい込んでいました。やはり元気に泳がせたいです。少し古く汚れている部分もありますが、お役に立てれば嬉しく思います」。
鯉のぼりと一緒に、さまざまな思い出も集まってきているのですね。自分が贈った鯉のぼりを見つけ、写真に収める方もいるそうです。
こうしたお祭りが開催できるのは地元のボランティアの方々のおかげです。地域住民協議会の松葉浩充会長(83歳)は「ボランティアも高齢化して準備が大変だけれど、みんなの喜ぶ顔を見るとやめるわけにはいかないんだよね」とおっしゃいます。そう、そう! 笑顔を見ると、もう少し頑張ろう!と思ってしまうのですよね。そんな笑顔の力が、これからも鯉のぼりを泳がせていくことでしょう。