新型コロナウイルス感染症が5類に移行しました。仕事を失ったり体調を崩してしまったり、愛しい人が入院してもお見舞いにも行けず、悲しいお別れをした方もいらっしゃるのではないでしょうか。この3年間、私たちは以前とは大きく異なる社会を生きてきました。まだ安心はできませんが、私たちはコロナ後をどう生きたらよいのか、そんなことを考えるきっかけになればと「七夕朗読会」を企画しました。どんな状況になっても、前向きに生きることが大事だと教えてくれる星野富弘さんの『愛、深き淵より。』を朗読します。
ところが、コロナではなかったのですが3月半ばに風邪をひき少々無理をして仕事をしたら、声が出なくなってしまいました。慌てて耳鼻咽喉科に行くと、喉の炎症で右側の声帯が動かなくなっていると言われました。声が出なくては仕事になりません。朗読や話し方の講座を休まざるを得ませんでした。状況を伝える私の声を聞くと、皆驚いていました。
ステロイドを服用すると、息苦しさから解放され、ガラガラ声ですが少し声が出るようになりました。「大丈夫!明日は出るようになるから」。いつもそう思いながら寝るのですが、朝起きると、やはり絞り出すような苦しそうな声しか出ません。何日も何日もそんな日が続き、このまま声が戻らなかったら「七夕朗読会」はできないかもしれない、早めに中止にした方が良いかもしれないと思いました。あまり弱音を吐かない私ですが、言いようのない不安に襲われ、夜も眠れなくなりました。話すことが好きで、それを生涯の仕事にすることができたのに、話したくても思うように声が出ないのです。
そんな状況が2か月も続いたある日、練習しなければ!と焦る気持ちがこみ上げてきました。声帯に負担をかけないように、小さな声で星野富弘さんの本を読みました。星野さんの気持ちに寄り添い、情景を思い描いて読むのです。首から下が動かないと分かったときの絶望、口に筆を加えて文字を書くことができたときの喜びなど、星野さんと一緒に一喜一憂しながら夢中になって読んでいたら、気持ちが楽になり声が出るような気がしてきました。それは、まるで星野さんが励ましてくれたような感じです。
「七夕朗読会~心をつなごう前向きに生きるために~」、八王子市のいちょうホールで7月7日に行います。ゲストはジャーナリストの池上彰さんです。小学生の時にお父様から勧められた『君たちはどう生きるか』を朗読してくださいます。コロナ後、あなたはどう生きていきたいですか……。