「本当に素晴らしいんですよ! ぜひお越しください。聴いていただければ必ずファンになってくださると思います。真剣な気持ちが伝わってくるんですよ。」
この言葉に嘘はありませんでした。ボランティア団体が主催するハンドベルの演奏会に行って、私もファンになりました。「ぽこ あ ぽこ ハンドベルアンサンブル10周年記念コンサート」です。知的障がいのある10人のハンドベルチームで、「ぽこ あ ぽこ」というのは、イタリア語で「少しずつ」という意味です。
演奏会は、午前午後と2回あり、どちらもチケットは完売。開場を待つ長い列ができていて、壁に貼られた「ぽこ あ ぽこ」の皆さんの写真に見入っています。かれらは、八王子市保健福祉センター1階にある「レストラン浅川」で働いています。所長を務める音楽療法士の野村諭さんが、黙々と働く姿を見て何かみんなで取り組める余暇活動があればいいなと考え、ハンドベルを演奏してみないかと呼びかけました。楽譜も読めず、自分のことを言葉でうまく伝えられないメンバーに、野村さんの指導が始まりました。音符の長さをどう伝えたら良いのか悩み、メトロノームを使って根気よく教えたそうです。
演奏会は、「見上げてごらん夜の星を」から始まり、アンコール曲まで90分以上に及びました。しかも、午前と午後でプログラムは異なります。どれも素晴らしく、奏でる音に耳を澄ませ、演奏する姿にくぎ付けになりました。
真剣な目で野村さんを見つめ、懸命にハンドベルを奏でる姿は、「一生懸命」という言葉では表現できないほど迫力に満ちていました。最後にひとりひとりに花束が手渡されると、感激のあまり泣き出すメンバーもいました。
喜びが爆発する瞬間を見て、もらい泣きしました。「よく頑張ったねー!」「ありがとう」そんな思いが大きな拍手になりました。ひたむきに頑張る姿は、すがすがしい風を送ってくれるのですね。地域の中に居場所があり、ハンドベルという生きがいに出合い、皆さんに喜んでもらえるなんて素晴らしいことです。
私がいちょうホールで行う「七夕朗読会」は、障がいがあっても病気でも、心を通わせて前向きに生きようというのがテーマです。そこで、「ぽこ あ ぽこ」の皆さんにも演奏していただくことにしました。メンバーは本番直前までひたすら練習するのだそうです。
ステージに手際よくテーブルを並べサポートをするのは、母親たちです。みんなの真剣な気持ちが伝わりますように。お越しくださった方々が、温かい気持ちになれますように。私も頑張ります!