「我が八王子城・北条氏(うじ)照(てる)隊は、鉢形(はちがた)城(じょう)寄居隊の軍勢と共に、ここに集結いたした。……」
木々に囲まれた小高い山にあった八王子城、その城跡を中心に「第12回北条氏照まつり」が行われました。八王子市をはじめ北条氏ゆかりの小田原市、伊豆の国市、埼玉県寄居町などから集まった総勢180人の武者行列が八王子城跡までの山道を歩くお祭りです。今年は、氏照に扮(ふん)して出陣宣言をしてほしいと頼まれました。戦国武将役だなんて面白そう、と軽い気持ちで引き受けました。
当日、胸当てやら肩当てやら、手甲(てっこう)脚(きゃ)絆(はん)やらたくさんの紐を結んで身支度を整えてもらい、気分が盛り上がってきました。さあ、いよいよ鎧(よろい)です。ところが、鎧(よろい)を手にしたらズシリと重くて「無理!」と思いました。男性用なので大きいし重いのです。重いだけではありません。草摺り(くさずり)(前垂れ?)がひざ下まであって歩くのもひと苦労です。こんな出で立ちで采配を振るっていたなんて、武将は体力がないと務まらないなぁと感じました。鎧は手作り、地元の皆さんが甲冑ひもで結んで作ったそうです。氏照の妻である比佐(ひさ)姫は、黒い網戸で作ったという烏帽子(えぼし)を見せてくれました。上手に作るものだなぁ!と感心しました。胸にかっこいい勝ち虫(トンボ)をあしらっていた男性もいました。百均で見つけたそうです。自分なりの甲冑を作るのが楽しいのですね。子どもたちに郷土の歴史に興味を持ってもらいたいという気持ちが、こんなところからも伝わってきます。
氏照公の兜(かぶと)と甲冑は20キロもあると聞き、結局私は会場までの山道は鎧を外して歩くことにしました。道中、写真を撮ろうと大勢がカメラを構えています。「氏照どこ?」というつぶやきに、「私です」とすまなそうに手を挙げましたが、やはり鎧がないとねぇ……。メイン会場に入るところで鎧をつけましたが、焦っていたので鎧をあまり持ち上げずに帯を締めたため、ステージ上のイスに座るとき、鎧が足の上にかぶさってしまいヨロヨロしました。
さあ、出番です、ステージ上で「出陣宣言」です。前夜夫に作ってもらった巻物を、宝塚の男役になった気分で、低めの声で堂々と読み上げました。気持ち良かった!
北条氏の時代から500年経った今でも、世界は争いごとが絶えず子どもたちが犠牲になっています。出陣宣言など無用な世界になってほしいものです。戦国時代の武将、北条氏政・氏照・氏邦ら兄弟は手を携えて郷土の発展に力を尽くしました。それが縁で姉妹都市の武将隊が交流を続けています。いつの世も大事なことは、争うことではなく、助け合うことですね。