東京福生市の公民館で、知的障がい者のための青年学級「にじのはらっぱ」(通称にじはら)が始まって39年。1か月に1回の「にじはら」を学級生は楽しみにしています。担当者は福生市の公民館職員、井上日出夫さんです。井上さんは福生市役所の職員で公民館が大好き! でも、3月で退職するので「にじはら」も離れることになります。その井上さんに、2月と3月の講師を頼まれました。
井上さんは、私が困らないように、事前に参加者一人ひとりについて細かく記したメモを渡してくれました。そこには「作業所でのできごとをよく話してくれる、数字が得意、時刻表を見るのが好き……」などと、どれも温かいまなざしで一人一人の特徴が書かれていました。
2月、私は初めて「にじはら」の皆さんにお会いしました。井上さんは学級生がやってくると「おう、元気だったか?」と声をかけます。飾らない人柄で、誰に対しても人懐こい笑顔で接するので参加者のご家族にも信頼されています。学級委員が出席を取った後、ラジオ体操をしてから始まります。私はマイクの持ち方を教え、「こんにちは」という挨拶の後、名前を言う練習をしました。そしてこの1年間の活動で何が一番楽しかったか、インタビューしました。サンドイッチ作りが楽しかったと言うので、何のサンドイッチが美味しかったか聞くと、ジャムという答えが返ってきました。みんなでカレンダーを作ったことを挙げる人もいました。季節ごとのイラストが描かれています。どの絵を描いたのか教えてもらいました。カレンダーの数字も手書きです。読みやすく温かみのある数字です。数字を書いた男性は、私が生年月日を伝えると、何曜日だったか教えてくれました。答えは「火曜日」。調べてみたら本当に火曜日でした。びっくり!
3月の「にじのはらっぱ閉級式」の日、井上さんはご不幸があり参加できませんでした。誰よりもこの日を楽しみにしていたのに残念です。井上さんの分まで頑張らなければ! ご家族の前で、皆さんに練習の成果を発揮してもらおうと張り切って出かけました。
これまで声を聞いたことがなかった女性が、自分の名前をマイクを通して言えたときは、ご家族はもちろん長年寄り添ってきたボランティアの皆さんも感激していました。ピアノが得意な男性は「にじのはらっぱの歌」の伴奏をしていました。ご家族やボランティアの方々からもひと言メッセージをいただき、閉級式は感動に包まれたなかで無事に終わりました。
保護者の高齢化も進み不安もあると思います。井上さんは、「辞めないで!」という声に応え、「にじはらだけは」とお手伝いすることにしたそうです。私もホッとしました。