「あれより もっとおおきな たいほうを つくるのだ」
これは、『もっと おおきな たいほうを』(福音館書店)という絵本のなかの王様のセリフです。たいほうを使った王様とキツネとのたたかいを、ユーモラスに伝えている絵本です。このセリフは「つくるのだ」というところを、拳を上げながら言うと上手に言えます。体は楽器なので、言葉の特徴をとらえて楽器を動かすと、セリフを自然な口調で言うことができます。いつも朗読講座で伝えていることですが、これが小学生に伝わるかしら・・・・・・。私の心配は杞憂に終わりました。小学5年生の男の子は、じつに堂々と読んでくれました。
国分寺市の市民団体が毎年夏に行っている「小中高生が伝えたい 平和への想い」というイベントで、アドバイザーを頼まれました。子どもたちが選んだ絵本を、みんなの前で朗読し平和の尊さを伝えようというもので、今年で10回めになります。主催する地域の皆さんと小学生から高校生までの子どもたちが集まり、話し合いを重ねます。子どもの発言にハッとさせられることがありました。
チラシがわかりにくいというのです。文字が多すぎて、これでは「行ってみたい」と思ってもらえない。鋭い指摘です。イベントのチラシを作ると、つい多くのことを盛り込みたくなってしまいます。そこで、チラシの原案を作ってもらったら、文字を大きく優しい感じのものにして、イラストや写真を交えた素敵なものを考えてくれました。はじめのうちはぼそぼそと俯きかげんに話していた子どもたちの声もしだいに大きくなり、頼もしく感じられるようになりました。
他に選んだ絵本は、広島の原爆ドームを主人公にした、アーサー・ビナードさんの『ドームがたり』(玉川大学出版部)。これを読んだのは、女子中学生。原爆ドームの目で世界をみつめる形で描かれた絵本です。表情豊かに朗読してくれました。もう1冊は、核兵器が二度と使われないように訴える『おりづるの旅 さだこの祈りをのせて』(PHP研究所)。これは男子高校生が朗読しました。彼は司会も務めてくれました。「みなさま、こんにちは」という冒頭の挨拶は、会場の人たちの顔を見て言うようにとアドバイスしたら、恥ずかしそうでしたが、当日はしっかりできて、会場から「こんにちは」という挨拶が返ってきました。彼は嬉しそうに、私の顔をちらっと見ました。私はにっこり大きくうなずきました。
イベントは大成功。子どもに教えるのも楽しいなぁ! 今回、平和を訴える絵本がたくさんあることに驚きました。今、まさにこうした活動が必要だと強く感じました。