ひとはみな
みえない つばさを もっている
その みえない つばさで
いっしょうけんめい
はばたいている
なにか「小さな決心」をしたとき
せなかのあたりが
シャッキリするではないか?
うんきっと みんなの せなかに
みえない つばさは ある!
ぱたぱたぱた
これは安房直子さんの「つばさ」という詩です。この詩を読んで、私の翼について考えました。
小学6年生のとき、下校放送が上手だと先生にほめられ、「アナウンサーになるといいね」という一言で、私の背中に小さな翼が生えてきました。その翼はどんどん大きくなって、SBS静岡放送でアナウンサーとしての一歩を踏み出しました。あの頃は、ニュース番組を担当したい、歌番組を担当したいと、どんどん翼が大きくなり一生懸命羽ばたいていました。
NHKでは関東地方向けのニュース番組を担当し、「きょうの料理」も長らく担当することができました。思ってもみなかった幸運なアナウンサー人生で、休むことなく羽ばたいていました。その後は、講演で各地を飛び回るようになり、会場を笑いに包んだり、涙を誘ったり、その時々のさまざまな体験を話すことでみんなの心をつかみ、私の翼は風を感じ逞しくなりました。
ところが、コロナ禍でアナウンサーという仕事はほとんど無くなってしまい、翼をもぎ取られてしまいました。そんな折、八王子市の公益財団の理事長という仕事をすることになり、背中がシャッキリしたことを覚えています。300人ほどの職員の名前と顔を覚え、みんなが気持ちよく働けるようにするにはどうしたらいいか考えるようになりました。これまでとは異なる翼です。
今、私の背中に翼はあるのでしょうか? 小さいけれど、翼はあります。ただ、ちょっと強い風が吹くと、すぐに折れてしまうような翼です。膠(こう)原病(げんびょう)という病と付き合いながら仕事をしなければならないので仕方のないことです。 “私の代わりはいないから、仕事を休むわけにはいかない” そんな長年の呪縛がストレスの素です。夫が風邪をひくと、すぐに私も風邪をひき、咳が長引き落ち込みます。仕事を辞めれば気持ちが楽になり、もっと人生を楽しめるかもしれないと考えることもあります。でも、仕事を辞めたら翼は無くなってしまうでしょう。もちろん新しい目標ができて、新たな翼が生えてくるかもしれませんが・・・・・・。私は、やはりこの小さな翼を携えて飛べるところまで飛んでみようと、小さな決心をしています。
皆さんの背中につばさはありますか?