2025年「今年の漢字」は「熊」。冬眠しない熊が、師走になっても市街地にまで現れるようになったのは衝撃でした。
じつは我が家にも、なかなか冬眠しない生き物がいます。ニジイロクワガタです。一昨年の春先、勤めていた八王子の財団のアルバイトの青年が「誰か、クワガタの飼育をしてみませんか?」と呼びかけたのですが、誰も手を挙げません。気の毒になり、私が「孫が虫大好きだから」と言って分けていただきました。ところが、彼が持ってきたのは卵1個と4匹の白い幼虫でした。成虫だと思っていた私は、びっくり!
虫は苦手なので、夫の力を借りて奮闘しました。蛹になったときは感動しました。でも、無事に成長したのは1匹だけでした。ニジイロクワガタは、その名のように虹色に輝いています。じつにきれいです。雌だったのでニジコと名付けました。
ちょうどパリオリンピックのころ、ニジコは虫かごから脱走しました。3センチほどなので、なかなかみつかりません。乾燥に弱いので数日中に見つけなければ死んでしまいます。ある夜、カリカリという音が聞こえてきました。ニジコが歩いている音です。「ここから出して!」という悲痛な叫びです。音を探っていくと下駄箱の中でした。靴をすべて出しましたが、いません。でも、音はします。玄関にはいつくばってよく見たら、下駄箱の下の方に2ミリほど隙間があり、音はその中から聞こえてきます。下駄箱を壊す以外救出方法はありません。夫は電動のこぎりを持ち出してきました。えー、下駄箱に穴を開けるの!? いろいろ考え、隙間に入る細い紐の先端に餌のゼリーをたっぷりつけて、ニジコのいるあたりに差し込みました。じっと待つこと数時間、ニジコがその紐を手繰り寄せて顔を出したのです。感激しました。おりしも体操男子団体が金メダルを獲得した瞬間でした。我が家では、「ニジコ、金メダル!」と祝杯を挙げました。
そして、昨年5月の連休のころ、冬眠から覚めて姿を現しました。ひと冬越すことができたのです。その後、ニジコの運動スペースを広げようと思い、植木鉢の底に敷く黒い網を買ってきて、虫かごの側面にぴったり沿うように置いてみました。今まで枝を上るだけだったニジコが、黒い網を上ったり横に移動したりしているではありませんか! 玄関に置き「ニジコ、行ってくるね」と、毎日声をかけました。ニジコは私の声を聞くと動いてくれるので、きっとわかるのでしょう。
そんなニジコが、冬になっても冬眠しないのです。黒いネットを縦横無尽に動きまわっています。ねえニジコ、もう冬眠した方が良いよ。果たして、ふた冬越せるでしょうか? 冬眠から覚めたらまた金メダルをあげるからね!