「先生、80歳を過ぎて横浜から青山の教室まで来るのは大変なんですよ。きょうもツインタワーの違う方のタワーの方に行ってしまいずいぶん歩きました。」
「まあ、それは大変でしたねー。」
「でもね、これも自分のためのウォーキングだと思うことにしているんですよ。迷ったおかげで歩くことができた!ってね」。
そう言いながら肩をすくめて笑いました。道に迷っても携帯電話を持っていないので、尋ねるしかないそうで、皆さん、親切に教えてくれるとおっしゃいます。一人暮らしで話し相手がいないから、道に迷ったときは幸せを感じるチャンスなのだそうです。なんて素敵な考え方だろうと思いました。同じような日常生活を送っていても、幸せを感じる人と感じない人がいるのですね。
1月半ば、玄関先の鉢植えの紅梅が咲き始めたことを真っ先に見つけたとき、私は嬉しくなりました。ご飯がふっくらおいしく炊きあがったときは幸せを感じます。夫が野菜たっぷりの餃子を作ってくれたときも嬉しくなりました。小学1年生の孫が「まきちゃん、ぼくたち良い親友だね!」と言ってくれたときは、孫が愛おしく感じられ、体調の悪いときなど、その言葉を思い出すと元気が出ます。
素敵なところをみつけたら、私はなるべく言葉にして伝えるようにしています。先日東京駅の長いエスカレーターを降りていたら、前にいる女性が紫色のジャケットに同じ色のつばの広い帽子をかぶっていました。しかもスラックスは白。エスカレーターを降りるとき、ポンと肩をたたき、「素敵ですね。紫がお似合いです」と声を掛けました。振り向いた瞬間、「えー、嬉しい! ありがとうございます」と、パーっと笑顔になりいつまでも手を振ってくれました。その人も私も幸せな気分になりましたよ。
話し方講座で皆さまにお勧めしていることは、夜寝る前に、きょうの楽しかったこと、嬉しかったこと、幸せを感じたことを思い出してみようということです。毎晩、幸せな気分になれるからです。
先日友人と話していて「吉永みち子さん」のお名前が出てきませんでした。「ほら、あの騎手のおくさまで、テレ朝の番組のコメンテーターで……」と、顔は思い浮かぶのですが、名前が出てこなかったのです。ところが、夕飯を食べているとき突然思い出しました。さっそく彼女に教えようとスマホを手にしたとたん、誰と話していたかを忘れてしまったのです。夫に話すと大笑いされました。寝る前にそのことを考えたら笑いがこみ上げてきましたが、誰と話していたのか思い出せず眠れなくなってしまいました。