「ねえ、ねえ、おじちゃん、おばちゃんはどうしてる?」
「元気だよ」
「病気だったよね?」
「がんで、4回も手術したんだよ」
「それは大変だったねー」
「おばちゃんはな、がん細胞に、『私が死んじゃったらあんたたちも死んじゃうんだよ、だから退散したほうがいいよ』と言い聞かせていたら治ったんだよ。お医者さんもびっくり!」
これは、腹話術師しろたにまもるさんと相棒ゴローちゃんの会話です。ほのぼのとした気分になりました。
こんな腹話術の楽しさを知ったのは、自称「まゆ毛のワタナベ」こと、渡邉勉さんが主宰する腹話術の会の5周年記念発表会に参加したからです。腹話術の合間に話し方のコツを教えてほしいと頼まれたのです。渡邉さんの前職は、東京医科歯科大学(現東京科学大学)病院内にある歯科用品専門店の店長です。あらゆる歯ブラシがそろっています。「どのくらいの力で歯を磨いているか測ってみませんか?」と声をかけてきた方が渡邉さんでした。渡邉さんは誰にでも話しかけるので、小さな専門店は渡邉さんと話したいというお客さんでにぎわっていました。
そんな渡邉さんが定年退職後に出合ったのが、腹話術でした。話し出すとおしゃべりが止まらない渡邉さんに向いていると思いました。でも、始めは乗り気ではなかったそうです。腹話術は技術の習得はもちろんですが、大事なことは台本だとおっしゃいます。地域に伝わる民話を調べていくうちにおもしろさに気がつきました。地域の人たちとのつながりができ、気がつくと5年も経っていたそうです。演じる人も観る人も、とても楽しそう! 80人ほど入る会場は満席でした。
腹話術で歌う方もいました。話すだけでも難しいのに歌うなんて! 手話ダンス、南京玉すだれなど、ハラハラする場面もありましたが、そこはご愛敬。会場の方たちの温かい拍手に救われました。渡邉さんは地域に伝わる伝説を題材にした「おどりばネコ伝説」を披露してくれました。
最後に登場したのが、日本腹話術協会理事長のしろたにまもるさんでした。会場にいるお子さんたちに腹話術の楽しさを教えてくれました。しろたにさんの奥様がいらしたのでうかがったら、がんの話は実話で、がん細胞にお説教し、あとは声を出して笑うことを心掛けたら本当に治ったのだと、おっしゃっていました。
この話を、近々がんの手術のために入院する友人に伝えたら、「とってもいい話、私もがんに言ってやるわ! 笑うこともOK」という返事がきました。腹話術は笑いと元気を届けるのですね。私もやってみようかなぁ。