兵庫県篠山市立中央公民館から依頼があり、5月に「篠山市高齢者大学」の開校式で講演をすることになりました。午前と午後の2回、同じ講演をするそうです。受講者が1,000人ほどいるので、2回に分けなければならないとか……。1,000人も!? それを聞いて、以前兵庫県公民館連合会の大会で講演させていただいた時のことを思い出しました。講演の合間をぬって、会場となっていた「いなみ野学園」を案内していただいたのです。いなみ野学園は、兵庫県が昭和44年に開設した高齢者のための4年制大学で、2年制の大学院もあります。自然豊かな広大な敷地内に、大講堂や図書館、事務所、それに受講生が作った野菜や花、手工芸品を販売する売店もありました。60歳以上で兵庫県にお住まいなら誰でも入学できます。園芸学科、健康づくり学科、文化学科、陶芸学科の4学科があります。ちょうど陶芸学科の皆さんがいらっしゃったので、声をかけてみました。「自分で作ったカップでコーヒーを飲むのが、今の目標」「ろくろ回している時、息とめちゃうことがあるよ」「ここに通うのが楽しみで、早く1週間たたないかなぁって」「割れちゃうこともあるけど、焼き上がりが楽しみなの」。 ひとりが話しだすとお喋りに花が咲き、笑顔の花が満開に。しわくちゃの笑顔の花には、頼もしさと逞しさを感じました。長年連れ添ったご主人が長患いの末に亡くなってしまい、何もする気が起こらなくてぼんやりと過ごしていた時、高齢者大学の文字が目にとまったと、ある女性が話してくれました。通えるか心配だったけれど、いつの間にか仲間ができて、みんなに会うのが楽しみになったと言っていました。居場所ができると、人は元気になるのですね。「オレ、ガキの頃は成績悪かったけど、ここでは優等生だよ」と言って胸を張るおじいちゃんは、輝いていました。子どもの頃とは違う学校が、そこにありました。いくつになっても、学ぶことには新しい発見があります。それは喜びになり、生きがいとなります。若い頃より、学ぶ意欲は強く積極的です。それが、若々しさにつながっていくのでしょう。各地で高齢者の方たちにお話をさせていただいていますが、素直な感性で私の話に笑ったり頷いたりしてくださいます。さまざまな苦労を乗り越えてきた人生の先輩から、私の方が学ばせていただいていると感謝しています。 篠山市の高齢者大学の平均年齢は75歳だそうです。どんな出会いがあるか楽しみです。