「本当に結婚したいと思っているの? 真剣に考えている? だったら、顔をあげてしっかり私の顔を見て! 久しぶりに会ったのだから嬉しいでしょう?もっとニッコリ笑わないと!」
東京駅近くのレストラン。ランチの注文を取りに来た女性店員は、私の迫力に驚いて水も置かずに、回れ右して行ってしまいました。私が結婚を迫っている、とんでもない場面に出くわしてしまったと思ったのでしょう。
私が対面していたのは、青森在住の男性です。以前、私のコミュニケーションの授業を受けてくれました。授業中、一度も私の顔を見ず、私が質問すると、下を向いてぶつぶつつぶやき、ケンカを売っているような態度でした。後になって、津軽弁の訛りが強く、言いたいことが伝わらなくて人前で話すことが苦痛になってしまったとわかりました。それ以来メールのやり取りが始まりました。不思議なことにメールの文章は共通語です。親から早く結婚してほしいと言われるが、一人っ子なのでなかなかお嫁さんが見つからないというのが悩みです。久しぶりに東京へ来るというので会ってみたら、相変わらずの態度だったので、冒頭のセリフとなったわけです。自分でも変わりたいと言うのですが、私が一つアドバイスすると、必ず「でも…」という答えが返ってきます。「また言い訳ばかりして。そんなことではいつまで経っても変われないよ!」と、辛辣な言葉を投げかけました。彼は、ぎこちなくニッコリ笑って青森へ帰っていきました。
我ながらおせっかいだと思うのですが、これは今に始まったことではありません。中学3年生の時、仲の良かった友人のお母様が亡くなってしまいました。受験勉強の大事な時期なのに、彼女は学校を休みがちでした。私は心配して、学校帰りに毎日彼女の家へ行き一緒に泣いていました。
NHKで番組を担当していた時、自殺予告の手紙が来たことがあります。私は電話をかけ、思いとどまるように説得しました。先日、私の書いた本にサインをしてほしいとその人から連絡があり、元気にしていることがわかって嬉しくなりました。
些細なことがトラウマになり人前で話すことができなくなったり、うつ病で仕事を辞めてしまったりする人もいます。そういう人には、寄り添うように辛抱強く話を聞くようにしています。自分のことを他人に話しているうちに、自分と向き合えるようになり、前向きな考え方になれるようです。
おせっかいは迷惑だと思われがちな時代ですが、役にたつこともあるのだと確信しています。でも、迷惑だったら言ってくださいね。