「テレビやゲームは、時間を決めて遊ばせることが子育てのコツですよ」。 子育ての講演で、私は必ずゲームのことを話します。ゲーム脳の取材をした時にゲームの怖さを知ったからです。ゲームばかりしていると、友達の気持ちを思いやったり、自分の気持ちをコントロールできなくなったりして、人とかかわりあう力が育まれないことがあります。息子が幼稚園生の頃、任天堂からゲーム機が発売され、以来わが子はゲームに夢中、大学受験の頃は明け方までゲームに興じていたので、「そんなにゲームがしたいのなら、大学に行かずに働いて好きなだけゲームしなさい!」と、深夜に怒鳴ったことがありました。子育て中の身にゲームは天敵でした。 ところが、不覚にも「ポケモンGO」に夫婦ではまってしまったのです。日本で配信が始まった日、夫が冗談半分に始めてみたらけっこう面白かったので、私もやってみました。ご存じない方のために、遊び方を説明します。公園や郵便局、神社、史跡などがポケストップに指定されていて、そこでポケットモンスター(ポケモン)を捕獲するためのボールを手に入れます。ポケモンは全部で150種類くらいいて、突然現れます。現れたら、ボールをぶつけて捕獲します。何回ぶつけても捕獲できない手強いものもいます。ボールを手に入れなければ何も始まらないので、必然的に外を歩かなければなりません。 一番人気は、ピカチュウです。どこでピカチュウをゲットできるか「ピカチュウの巣」という情報があるほどです。退職してサンデー毎日の夫に誘われ、東京で最も暑かった日に立川市の昭和記念公園にピカチュウをゲットしに行きました。親子連れで賑わうプールを横目に見ながら必死で歩きましたが、ピカチュウには会えませんでした。 次に昭島市にある昭和公園に行ってみました。公園に入るや否や、ゾロゾロとスマホを見ながら移動していく大集団が。異様な光景に驚いた次の瞬間、私のスマホにピカチュウが!「ここに居たんだね!」感激しました。その公園では中学生の全国野球大会が行われていました。試合に負けたのか、神妙な面持ちで監督の話を聞いている中学生達の横を、スマホを睨んだ大人の集団が移動していくのは、滑稽で恐縮ものでした。達成感を感じるところがゲームの魅力だと息子の気持ちが少し理解できた頃、ポケモン熱も冷めていきました。……と、思ったのですが、未知のポケモンが隠れているとわかると、思わずスマホを手に取ってしまう私です。