北海道のほぼ中央に位置する占冠村(しむかっぷむら)は、東京23区に近い面積に人口1,200人程という自然豊かな所です。占冠というのは、アイヌ語で「シモカプ」といい「とても静かで平和な上流の場所」という意味だそうです。中村博村長は全国公民館連合会の監事です。理事会の時にいただいた「占冠村の子どもたちに村松さんの朗読を聴かせたい」という言葉に嬉しくなり、文部科学省の「子どもゆめききん」に応募し占冠村に行くことを決めました。ところが、採用してもらえませんでした。自費で行こうと思った矢先「READYFOR?」というクラウドファンディングがあることを知り応募してみました。
ご存知ですか? インターネットで、「こういうことをしたい!」と訴え、賛同してくれた人に寄付してもらうシステムです。初めてのチャレンジで心配でしたが、書類審査と2回の面接を受け、スタッフ7人の飛行機代をご支援いただきたい旨を訴えたところ、採用されました。目標額が集まったら17%をREADYFOR?に支払い、達しなかったら支援してくださった方達に支援金をお返しするという仕組みです。インターネットという見えない世界でお金のやり取りが行われているのです。このREADYFOR?は、20代後半の世代が運営するサイトと知って、さらにびっくりしました。
おかげさまで、多くの方々にご支援いただき、占冠村で「村松真貴子 朗読とお話の会」を実施することができました。10月9日、占冠村教育委員会が用意してくれたバスで新千歳空港から占冠村に向かいました。占冠村コミュニティプラザ(中央公民館)は、西欧風のおしゃれな建物です。入念な打ち合わせと舞台の準備をし、いよいよ10日の朗読会の日を迎えました。リハーサルをしていたら、占冠中央小学校から連絡がありました。ながーい海苔巻きを作るイベントをしているので参加しませんかというお誘いです。PTAや地域のお年寄りたちもいらっしゃるというので、さっそく歩いて行ってみました。校舎に入ると、ズラーッと並べられたテーブルに大勢が行儀よく座っています。私たちも一緒になって海苔をご飯粒でくっつけ、かんぴょうと卵焼き、キュウリをのせて、「3・2・1・0」という掛け声で一斉に巻きました。保護者の皆さんも子どものころ、この海苔巻き作りに参加したそうです。村に伝わる恒例の行事なのです。15mほどの海苔巻き2本の完成です。おいしかったのは言うまでもありません。
午後からは朗読とお話の会です。前日までの雨も上がり、100人近い方達が集まってくれました。NHKや新聞でこの催しがあることを知った、近隣の読み聞かせをしている皆さんもお越しくださいました。
絵本の挿絵を映しだす舞台の上の立派なスクリーンは、教育委員会の担当者がこの日のために手作りしたと聞き感激しました。前の方には子どもたちが座っています。緞帳が上がり、「おこんじょうるり」の朗読を始めると、皆さんがぐいぐいと物語の世界に引き込まれるのを感じました。朗読のあとは、友達を作るための自己紹介の仕方や、自分の思いを言葉にして相手に伝えることの大切さをお話ししました。占冠村の子どもたちは積極的で素直です。それにつられて、大人も発声練習や表現力を付けるための練習に参加しました。「かえるぴょこぴょこ みぴょこぴょこ…」教育長もはじけて挑戦してくれました。会場から大きな拍手がわきおこりました。「これから読み聞かせを頑張る!」と言ってくれた母親もいました。
インターネットの恩恵にあずかり訪れた占冠村、学校と地域のつながりが子どもを育む力になり、その舞台に公民館が生かされていることを実感しました。