「始めに、皆様の年齢層を知りたいので、ご自分が当てはまるところで拍手してください。では、60代の方、拍手してくださーい」会場から大きな拍手が。「では、70代の方!」もっと大きな拍手が返ってきました。「それでは、80代の方!」人数は少なくなりましたが、力強い拍手が。「いらっしゃらないかもしれませんが、90代の方は?」パチパチパチ…。会場中央に座っている女性が拍手なさいました。はにかんで笑ったお顔がステキでした。とても90歳には見えません。若々しいのです。
これは、千葉県松戸市の「まつど生涯学習大学講座」の基調講演のようすです。松戸市では、60歳以上を対象に18回の講座を企画しています。この日は開講式も行われ、2階席までいっぱいでした。
司会をしたのは、教育委員会の担当者。滑舌もよく、ソフトな話し方で好感が持てました。基調講演の演題は、「感じの良い『話し方』の極意」です。この演題は主催者からのリクエスト。そこで私は、司会の男性をステージに呼びました。慌てて現れたその青年に、先ほどの原稿をもう一度読んでほしいとお願いしました。 「それでは、資料の〇〇ページをお開きください。ここには…」 「はい、そこで、ストップ! 資料を開いてくださいと言ったら、会場の皆さんを観察しましょう。皆さん、資料を取り出して、ページをめくるでしょう。結構時間がかかるんですよ。やっとページを開いたときには、もう次の説明に移っているんですね。追いついていけないのです。だから、その時間を取りながら話すことが『極意』です。会場の皆様の年齢をみても、時間がかかることがわかるでしょう?」ドッと笑いが起こりました。彼は、会場の様子を見ながら、ゆっくり間を取って、もう一度原稿を読みました。今度は拍手喝采でした。会場は一気に和んだ雰囲気に包まれました。
数人の方に自己紹介をしていただくと、フルマラソンをしていたり、海外でスキーを楽しんだり……、じつに多彩で意欲的なので、びっくりしました。臆することなく、ステージで自分の事を語ります。いくつになっても、好奇心旺盛にいろいろな事に興味を抱き、友人を作ることが、若々しく生きる秘訣のようです。60歳を過ぎてから、地域の中で上手に居場所を作ることが、鍵を握っています。
松戸の皆さんは、"打てば響く"方達ばかり。よく笑ってくれるので、話す方も熱が入ります。元気な高齢者は、地域の活力になると実感しました。