新年あけまして、おめでとうございます。皆さんにとって、笑顔の出番がたくさんある年になりますように。
「ダメよ~ ダメダメ!」 私はそう言いたい気分でした。私のホームページを担当している事務所を通して仕事の依頼がきました。日本の農業を強くするために、遺伝子組み換え作物について紹介するフォーラムの司会と、コーディネーターをしてほしいというのです。私は遺伝子組み換え大豆を使ったお豆腐や納豆は、絶対に買いません。だから断ろうと思ったのです。ところが、先方から意外な応えが。「そういう方にやってほしいのです」。消費者団体からも反対の声が上がりそうなテーマですが、そこまでおっしゃるのならと、引き受けることにしました。
フォーラムを主催する「バイテク情報普及会」に、打ち合わせに行きました。フォーラムでは、フィリピンで遺伝子組み換えトウモロコシの栽培を始めたご夫妻が講演することになっていました。ご主人は消防士、奥さまは小学校の先生をしながら農業を営んでいます。日本にも多い兼業農家です。また、遺伝子組み換え作物の普及にあたっているクロップライフアジアの担当ディレクターも来日し、講演するそうです。
フォーラム当日、世界の食糧事情の講演を聴きました。世界の食物需要は2050年までに70%も増大すると予測され、このままでは途上国の、飢えに苦しむ人がさらに増えてしまうこと。また、農業には水が必要ですが、農業用水は、世界の真水使用の70%を占めるということ。干ばつに強い作物の品種改良が必要になるということでした。日本の食糧自給率は39%、その数字をいかに上げるかということしか考えていなかった私は、世界に目を向けた農業政策の必要性を感じました。
フィリピンから来日した農家のご夫婦は、大変緊張していました。日本どころか初めてマニラへ行き、初めて飛行機に乗ったのだそうです。「2010年に0,5ヘクタールの土地でバイテク・トウモロコシの栽培を開始したら、現在は6ヘクタールになり、予想を超える収量を上げることができた。農薬散布が少なくて済み、害虫がつかず、品質の良いトウモロコシができる。収穫期には、近所の人に手伝ってもらい、賃金を払い、地域の絆が深まり、暮らしにゆとりができた」と、嬉しそうに話してくれました。
そうはいっても、安全なのか、誰でも気になりますよね。でも、そうしたトウモロコシを食べて育った牛を、私たちは食べているのです。「バイテク」「遺伝子組み換え」と聞くと嫌悪感を抱きますが、昔から言われている「品種改良」と言えば、また違ったニュアンスになります。フォーラムに参加した消費者団体の方が「何も知らないで、ダメといってはいけない。消費者は、正しい知識を知ろうとしなければダメなのだ」と、おっしゃっていました。
知識もないのに断ろうとした自分に、「ダメよ~ ダメダメ!」と、またダメ出しをした私です。