「いつもありがとうございます。お世話になりっぱなしで、感謝しています。清潔で使い易くて、本当に良かったです」 「いえいえ、こちらこそ。こちらのお宅は静かだし私も居心地いいですよ。どこもかしこもピッカピカ! 本当に気持ちいいですわね」 「まあ、そう言っていただけると、私も嬉しいです。お掃除サボってしまってごめんなさい。あら、ここもこすったほうがいいですね」 「わあ、気持ちいいです。サッパリしました。また、よろしくお願いしますね」 「はーい」 これは、ある日の私とトイレの会話です。トイレ掃除をしながら、私が一人二役で、こんな会話をしてみるのです。ちなみにもう1か所のトイレでは・・・・・・。 「お久しぶりです」 「おや、きょうは、奥さまですか。お元気そうですね」(こちらのトイレは男性だと仮定して) 「おかげさまで元気です。ここは日当たりがいいから、観葉植物がよく育ちますね」 「明るくて、西日が眩しいくらいですよ。でも、誰も来てくれない日が続くとつまらないですよ。観葉植物は話し相手になってくれませんから」 「あら、そうだわね。じゃあ、1日1回は会いに来るようにしますね。はい、お掃除終了。では、またね」 話し方教室や朗読教室に来てくださる方の中に、一人暮らしの方がけっこういらっしゃいます。お年寄りの方は、家の中で声を出すことがないし、声をあげて笑うこともないので、だんだん声が出なくなるような気がして教室に通うことにしたと、おっしゃいます。 そうなのです。若いうちは、仕事をしたり、食事に出かけたりして、誰かと話すことは当たり前なのですが、退職した後、一人で暮らしていると声を出さなくなってしまいます。 声帯もほど良く訓練しないと、年齢相応に老化してしまいます。無理に大きな声を出すのではなく、日常の中で出し惜しみしないで、しっかりと声を出すようにすればいいのです。夫は単身赴任で息子も一人暮らしを始めたので、私も普段は一人です。といっても、無口な猫がいます。ほとんど鳴かないので、私が勝手に話しかけます。 ペットもいない場合は、冒頭で私が紹介したような会話をしてみましょうと、話し方教室で紹介したら、大笑いされました。 「たまに帰ってくる娘に、『お母さん、とうとうボケちゃったの!?』って、言われそうだけど、面白そうだからやってみます」と、言ってくださいました。お鍋やスプーン、お茶碗、洗濯機など、話し相手は、じつは身の回りにたくさんいるんですよ。