2月、首都圏は2回も記録的な大雪に見舞われました。孤立してしまった地域ができ、犠牲者まで出てしまいました。でも、思わぬ収穫もありました。
雪が降るたび、私は肩身の狭い思いをしていました。スコップがたちまち売り切れてしまい、塵取りで雪かきをしていたからです。そこで今年は、早めにスコップを買いました。1度目の大雪に見舞われた2月8日の週末、静岡に赴任中の夫は新幹線が止まってしまい帰宅できませんでした。夜、降りしきる雪の中、私は車のワイパーを上げ、雪を払い、スコップを手に自宅前の道路を2回も雪かきしました。スコップがあるというだけで、百人力です。
翌朝、ザッ、ザッ、シャッ!という音で目覚めました。外を見ると、近所の人たちが総出で雪かきを始めています。深夜の雪かきはすべて徒労だったと言えるほど、車もすっぽりと雪に覆われていました。さっそく外へ飛び出しました。隣家には、近くに住むお嬢さんが娘さんを連れて助っ人に来ていました。お孫さんと一緒に雪かきに精を出すおじいちゃんは、張り切っていました。我が家の駐車場の雪かきまで手伝ってくれました。
初めて見る顔がありました。我が家を建て替える為、仮住まいをしている間に引っ越してきたお宅の、お嬢さんでした。気立ての良い娘さんでした。また、幼いころからよく知っている双子の男の子は、見違えるほど大きくなって、頼れるイケメンに成長していました。父親の指示に従って、黙々と働いてくれました。よその子の成長は、目を見張るものがあります。考えてみれば、改まって家族を紹介する機会などないので、雪かきは近所の人が顔を合わせる絶好の場になりました。「いくつになったの」「どんな仕事をしているの」などと会話も弾み、絆を深めてくれました。
気心が知れてくると話し易くなり、それぞれの家で車を出す時に雪が邪魔になってはいけないからと、誰も使っていない路地まで雪を運ぶことにしました。汗が噴き出してきましたが、なんだかお祭り気分のノリで爽快でした。
「こんなにきれいに雪かきしている所はないよ。素晴らしいね!」と、都知事選の投票帰りのお年寄りが、声をかけてくれました。達成感を感じた私は、年甲斐もなく、2階のベランダで雪だるまを作りました。
隣にどんな人が住んでいるのかわからない都会暮らしにとって、こうしたつながりが、いざという時、力になるのだと思いました。