先月号では、ロコモティブシンドロームにならないためにも、エスカレーターではなく階段を使うようにしようと書きましたが、あろうことか、自宅の階段で転げ落ちて、膝にけがをしてしまいました。
翌日、車を運転して、近所の整形外科に行きました。噂にたがわず、待合室は大勢のお年寄りでいっぱいで2時間待ちです。やっと受けた診察で、アキレス腱が切れていると告げられました。
手術を勧められ、紹介された近所の病院に行ったのですが、何とも頼りない病院でしたので、夜までかかって信頼できる病院を見つけました。翌日には入院、2日目に手術、3日目に退院というスピード入院でした。
さあ、それからが大変です。ギプスに松葉杖。右足だけの生活が始まりました。しかも一人暮らしです。痛みはないものの、実に不便です。今は亡き母のためにつけたエレベーターが大活躍! 1階と2階のエレベーターのドアのところにキャスター付きの椅子を置き、その椅子に腰かけて移動することにしました。家中をビュンビュン移動し(狭いけれど、私にはそう感じられたのです)、掃除も洗濯もできました。買い物に出られない私を気遣って、友人や近所の方が、野菜から冷凍食品まで、どっさり差し入れしてくれました。これは、本当にありがたかったです。
手術から1週間、ギプスを外し、6センチヒールの特殊な装具を取り付けることになりました。これで、松葉づえなしで歩くことができます。とは言っても、膝下まで固定されているので、足を引きずるようにして歩きます。どんどん追い越されます。歩くことって、こんなに大変なことだったんだ……。 「外出するときは、使わなくても松葉杖を手にして、装具はズボンの外側にして、明らかに足が不自由だと分かるようにしたほうがいいですよ。人ごみは凶器ですから」。
友人のアドバイスに従いました。ところが、朝、通勤電車に乗ったら、それまで英単語を覚えていたはずの、目の前に座っている男子学生は居眠りを始めるではありませんか!? 新聞を読んでいた隣の男性もいつの間にか寝ています。朝の車内はほとんどの人が寝ているんですねえ、特に若い人は。 「ねえ、ボク、ここで席を譲れるようになることの方が、受験勉強より大事なんだよ。社会に目を開きなさい」と言いたかったのは山々でしたが、「普通に歩けるようになるまで、私自身が社会勉強をするのだろうな」と、転ばないように踏ん張ったのでした。