メタボを気にしている夫と、運動不足で肩こりに悩む私は、東京奥多摩にある御岳山に登ることにしました。フィトンチッドと木漏れ日を浴びながら山登りをすれば、身も心もリフレッシュするだろうと思ったのです。
行楽シーズンだけあって、電車も混んでいました。標高929m、ケーブルカーもあるので気軽に登ることができます。改札口を出ると、トイレの前まで長い行列が……。「並びたくない」と思い、やめました。駅の石段を降りると、また長い行列が……。ケーブルカーがある登山口まで行くバスを待つ人達です。何台も待たないと乗車できそうにありません。山登りに来たのに、バスに乗るのはいかがなものか、それに"徒歩10分"と書いてあったから歩いていこうと言うと、夫も賛成してくれました。
「さあ、歩くぞ~!」小鳥のさえずりはBGMのように心地良く、私達は足取り軽く歩き始めました。その横を、満員のバスが追い越していきました。歩いているのはふたりだけなのが、ちょっと気になりました。間もなく登り坂になりました。汗がでて息も切れてきて、しだいに無口に……。また満員のバスが追い越していきました。半端じゃないきつい坂をハアハアしながら登ること1時間。「徒歩10分じゃなかったのか!?」夫は不機嫌になっていました。駐車場待ちの長い車の列を横目に見ながら、やっと登山口へ着いた時には、ふたりともヘロヘロでした。責任を感じた私は、ケーブルカーのチケット売り場へ。
「えー!歩いて来たんですか?僕らだって歩きませんよ。バスで10分はかかりますから、かなりの距離ですよ」迷わず、往復乗車券を買いました。
ケーブルカーを降りてから山頂までの石段や登り坂は、それほど苦にはならず、眼下に広がるパノラマを見ながらお弁当を食べました。
下山しようとしたら、今度は長―い行列が! 嫌な予感がしました。ケーブルカーの順番待ちの列でした。くねくねと道なりに延々と続いています。歩いて降りた方が早いと列を離れる人もいました。並びたくないけれど、往復乗車券を買ってしまったので仕方ありません。結局1時間以上も並びました。
数年前、初日の出を拝もうと高尾山に行った時のことを思い出しました。あの時も、ケーブルカー待ちの幾重にも曲がった長蛇の列に並びたくない一心で、歩いて登ったら、寒さと疲れで新年早々風邪をひき寝込んでしまいました。
並びたくないばかりに、いつも選択を誤る自分に、やっと気がつきました。