"シェーグレン症候群"という耳慣れない病名を聞いてから、早いもので1年半。春先になると目が痛痒く、くしゃみと鼻水に悩まされていた私は、ずっと花粉症だと思っていました。ところが、急に虫歯と口内炎になり、更に口が渇くようになったため、インターネットで調べたところシェーグレン症候群という病名に突き当たりました。
まさか!?半信半疑で病院で検査したところ、難病に指定されているシェーグレン症候群であることが判明。膠原病の一種で、異常な白血球が増え、それが自分の涙線と唾液腺を攻撃してしまう自己免疫疾患です。唾液が出なくなるということは、アナウンサーにとっては致命傷です。機械に例えるなら、油がない状態ですから動きが悪くなります。滑舌が悪くなり、早口言葉が言いづらくなります。
しかも、唇の内側を数か所切って唾液腺の数を調べる検査をする際、メスが深く入りすぎて神経が切れてしまいました。下の歯の付け根から唇にかけて、強張って痺れ、そのためにまた別の病院に通わなければならなくなりました。不幸に不幸が重なり、絶望感に苛まれました。
そんな折、星野富弘さんの「愛、深き淵より。」という本を読み返しました。NHKの「イブニングネットワーク」を担当していた頃、群馬県に「富弘美術館」がオープンしたニュースを伝えたことがあります。その時に興味を持って読んだ本です。中学の体育教師をしていた星野さんは、クラブ活動中の事故で首から下が全く動かなくなり、9年間の入院生活を強いられますが、口に筆を加えて詩画を描く術を身につけ、生きる希望を見出します。絶望の淵に立たされていた星野さんが、一歩足を前に踏み出すまでの道のりが描かれています。 「病気や障がいがあっても、不幸ではない。不幸かどうかは自分が決めること」そんな星野さんの思いを伝えようと、「心をつなごう! 前向きに生きるために」というテーマで「愛、深き淵より。」を朗読するステージを企画しました。
長い時間の朗読に不安はありましたが、無事に終わりました。目の不自由な方は「来て良かった! 生きる希望がわいてきた」と、おっしゃいました。また、「癌がみつかり自分だけが不幸だと思っていたけれど、前向きに生きていきます」「久しぶりに心が震えるほど感動しました」など、感想を伝えてくれました。どんな状況でも、気持ちの持ちようで道は開けてきます。この朗読会は、自分自身へ贈るエールでもあるのです。
新しい年! 前向きに、楽しい時を積み重ねていきましょう。今年もどうぞよろしくお願いいたします。