小学生のお子さんがいる母親が、サッカークラブのことで悩みを打ち明けてきました。コーチのポリシーは、試合に勝つこと。だから学年に関係なく、上手な子が試合に出られるのだそうです。
「せめて少しの時間でも試合に出られたら…励みになるし、いい思い出になるのに」
そう思うけれど、コーチにも他の親にも言えないというのです。
私は中学生の頃、「アタックNo.1」や「サインはV」の影響でバレーボールに夢中でした。身長156cm、レギュラーになれる可能性はありません。1年生の時は、ボール拾いとパス練習に明け暮れました。
日曜日には練習試合があり、そこで、衝撃的なシーンを目の当たりにしました。相手チームの主力選手がミスを連発したら、顧問の先生が彼女を呼び、自分の履いていた体育館シューズで彼女の頭をいきなり叩いたのです。体育館から一切の動きが消え、「バカヤロー! やめちまえ!」という怒鳴り声が、胸に突き刺さりました。うつむいた彼女の横顔から涙が床に落ちました。「そこまでしなくても……」まるで、自分が叩かれているような気がしました。重苦しい空気のなか、必死にプレーしている彼女の姿が目に焼きつきました。
2年生になると、変化球サーブが得意な私はレシーバーとして試合に出る機会を与えられました。私より上手な友人が怪我などで退部してしまい、いつしか私はキャプテンを務めることに。試合に出られない仲間の気持ちを思いやり、励まし合いました。
朝練、昼練、放課後練、自宅に帰って夕食を済ませた後、夜練までありました。夜の練習は、当時全国大会で大活躍していた八王子実践高校に行き、胸を借りて練習するという公立中学とは思えないほどの熱の入れようでした。
優勝候補と言われながらも、結局東京都の夏の大会で3位に終わり、涙が枯れるほど泣きました。くじけずに続けたからこその涙でした。
スポーツには勝敗がつきもの。でも、勝つことより大切なことが必ずある。小学生のスポーツクラブなら尚更のこと。下手でも試合に出られるような配慮がほしい。それによって貴重な体験ができるのだから。成長すれば、勝つために自分が出られないことも受け入れられるようになるはず。
中学2年生の夏休み、カナダから来日したバレーボールチームと親善試合をする機会があり、記念にメダルを贈りました。私が監督の首にメダルをかけたら、突然私の頬にチュッ! これも、諦めずに頑張ったおかげかな。