「新1年生の入場です。」
ちょっと大きめのブレザーを着たピッカピカの小学1年生が体育館に入ってきます。七三にきっちり分けたヘアスタイルがキマッテいる男の子。女の子の髪の大きなリボンは、この日のために用意したのでしょう。歩くたびに楽しそうに揺れています。親の思いを身にまとった子どもたちが次々に入ってくると、保護者席に座っている親たちは一斉にビデオのスイッチオン。拍手の中、先生に付き添われて緊張気味に椅子に座る子もいれば、隣の子とふざけあってなかなか椅子に座ろうとしない子も。式が始まると、一瞬背筋がピッと伸びますが、しばらくすると、そわそわざわざわ……。校長先生の挨拶も卒業式の時とは違い、優しい言葉でゆっくり話しています。校長先生の「おめでとうございます。」という言葉に、突然「ありがとうございます。」と、実にノビノビと挨拶を返す子もいて、その予期せぬ反応に、皆自然と頬が緩んできます。
息子が小学生の頃、私は、NHKの昼前の番組を担当していました。月曜日から土曜日までの生放送、当然入学式には出席できません。フルタイムで仕事をしているからこそ、子どもの節目の行事には立ち会いたいと思っていたのですが、小学校の入学式だけは参加できませんでした。
ところが、地元の教育委員を仰せつかったことで、小学校の入学式に参加する機会を得ました。すると、わが子の姿を写そうと必死でカメラを構える親の姿に、自分が重なりました。首をのばして必死に子どものようすをうかがう母親を見て、私もきっとあんなふうにしていただろうなと、クスッと笑ってしまいました。椅子が大きすぎるために足をブラブラしている1年生をみて、わが子も足ブラブラだったのかな……と、思いを馳せ、やっと小学校の入学式を体験できたように思いました。それは、まるで、ジグソーパズルの最後の1枚をみつけ、ピタッとはめ込んで完成した瞬間に似た思いでした。
歓迎の演奏をする2年生は、たった1年しか違わないのに、大きく頼もしく見えます。知的障害のあるお子さんも一生懸命演奏していました。 毎朝、横断歩道に立ち、「おはよう」と声をかけてくれる地域の方も招かれていました。
朝ご飯を作ってもらえなかったり、父親の暴力に怯えたり……恵まれた環境の子どもたちばかりではありません。親や教職員、地域の方たちの温かい眼差しと協力で、子どもたちが健やかに育っていくことを願わずにはいられません。