我が家に可愛い家族が増えました。生後2か月のオスのペルシャ猫です。去年の10月に15年間一緒に暮らした猫が死んでしまい、よその猫を見るたびに涙にくれる私のようすを見かねて、猫を飼うことに家族が賛成してくれたのです。前の猫は、友人が飼っていた猫から生まれたので、人になついていました。今度の猫は、生まれて1ヶ月で親と離され、ペットショップの小さな檻のなかで過ごしてきたため、人間という生き物に馴染みがありません。トイレのしつけはOKですが、あとは戸惑うことばかりです。
まず、名前を覚えてくれません。前の猫と似ているから「ミルキー」と、つい同じ名前で呼んでしまいましたが、「名前」という概念があるはずもなく、何度呼んでも、知らん顔! それどころか、近づこうものなら、驚いて背中を丸めてジャンプしタタッと逃げていきます。斜めに走り去る姿は、まるで「欽ちゃん走り」のようです。無理もありません。彼にとって私達は、「ガリバー」なのですから。
食事はまだ離乳食。粉ミルクを溶いたものと、カリカリの堅い餌にお湯をかけて20分おいて柔らかくしたものを、1日3回与えます。「ごはんだよ!」と、声をかけても餌に興味を示しません。
でも、まだ赤ちゃんですから可愛いったらありません。「動く縫いぐるみ」です。自分より小さな羊のぬいぐるみにじゃれて、クリっとでんぐり返しをしたり、鈴の入った小さなボールを前足で器用に飛ばして走り回って遊んでいます。将来は、サッカー選手になったらいいのに! と感心するくらい見事です。
時々リボンなどで遊んであげて、あとはそっと見守っていたら、1週間ほどしたある日、名前を呼ぶと振り向くようになりました。更に、私が台所で食事の支度をしていたら、足下にチョコンと座っているミルキーを発見。少しずつ距離が縮まってくるのが分かりました。10日ほど経ったころ、ソファに座っていたら私の膝の上に跳び乗ってきて、お昼寝を始めました。小さな温もりに命の重さを感じ、愛おしくなりました。
わが子も、かつてはこんなふうに私の腕のなかで眠っていた! 離乳食をひと口食べて、ニコッと天使の微笑みを返してくれたこともあった! が、大学生になった現在、メールの返信さえしてくれず、家で食事をすることも少なくなり、顔を合わせれば憎まれ口をきくありさまです。今は、口答えしない子猫にひたすら癒され、猫育てに夢中です。