ハナミズキに金木犀、隠れ蓑にどうだんつつじ……。狭い庭で張り合うように枝を伸ばしている植木の剪定をシルバー人材センターに頼んだところ、今年も小池さんがやってきてくれました。仕事が丁寧で、しかもハンサム! 上原謙さんのような雰囲気でニコニコしながらお話なさる方です。休憩のとき、ベランダでお茶をご一緒します。クッキーや焼き菓子なども好物のようで私と気が合います。ふと小池さんの掌のタコが目に入りました。左手の中指の付け根のあたりに大きなタコが。植木鋏のタコではなさそうだし、気になって尋ねると、"竹トンボのタコ"という意外な答えが返ってきました。
幼い頃、私も竹トンボで遊んだことがあります。両手でよじりながら、自分もピョンと軽く飛び上がって、竹トンボを大空に向かって放ちました。クルクル回りながら飛んでいくようすが面白くて、飛ばしては拾い、飛ばしては拾い、今度はもっと高く飛ばそうと、夢中になって遊んだ思い出があります。でも、タコができるほど竹トンボを飛ばすなんて!?
竹トンボはスポーツなのだと、小池さんは教えてくれました。競技会があり、そこでは、高度・距離・滞空時間の3種目を競うと聞いて驚きました。しかも、竹と接着剤だけを使った"純竹部門"と、先端に金属をはめ込んだ"象嵌部門"とがあるそうです。竹をナイフで削り、風をよく受けて飛ぶように角度をつけ、自分で納得のいく竹トンボを作り、大会前になると、朝から近所の公園へでかけ、ひたすら練習に励むのだそうです。竹トンボを放つ瞬間、いかに左手を強く引くか、何度も練習を重ねるうちにできたタコなのでしょう。
しばらくして、小池さんから連絡が入りました。今年最初の竹トンボ競技大会が、富山県立山町で行われ、象嵌滞空部門で、21秒86で優勝したとのこと! 日焼けした嬉しそうな顔が目に浮かんできました。
近頃は、小学校へ出向き竹トンボ教室も開いているそうです。ナイフの使い方を知らない子どもたちにとっては、指先を鍛える絶好の機会です。完成した竹トンボで遊ぶ子どもたちを見ると嬉しくなると、小池さんはおっしゃいます。
そんな小池さんが、先日、象嵌竹トンボをプレゼントしてくださいました。羽の裏側に丸く銅が埋め込んであり、勢いよく回転します。広場で飛ばしたら小池さんの記録を破るかも!? 小さな竹トンボは、大きな夢をのせて、大空めざして舞い上がります。