篤姫ブームにのって鹿児島旅行をしようと母を誘ったら、珍しく父も一緒に行きたいと言いました。父は、要支援2。背骨の手術をしたため、短い距離なら杖をついてなんとか歩けます。母も、要支援1。ふたり合わせて(!?)要支援3。弟が無理だと止めましたが、私は親子3人での鹿児島旅行を決めました。母達は八王子駅からJR中央線に乗り、同じ電車に国分寺駅から乗り込み羽田へ向かうことにしました。
ところが、当日の朝、母から電話がありました。中央線が人身事故のため止まっているというのです。飛行機の時間には余裕があるので、動き出すのを待って神田駅で待ち合わせることに。国分寺駅に行くと、ホームはごった返していました。動きだしたとはいうものの、普段は3~5分おきにでている電車が20分待ってもやってきません。来たと思ったら、扉が開くと、まるで風船が弾けたように人が押し出され、乗り込むどころではありません。やむなく次を待つことに。母に、電車に乗れたかメールしました。80歳を過ぎてから携帯電話を使うようになった母からの返事はありません。それもその筈、携帯電話など使えないほどの混雑で、次の電車も超満員。2台見送って決死の覚悟で乗りこみました。車内は足が床につかないほど混んでいて、押しつぶされて体が痛く、動きたくても動けないのです。息苦しくて気分が悪くなりました。鹿児島が遠くなりました。神田駅について、ホームにころがりでるように降りると、ヨロヨロしながら母と父が降りてきました。同じ電車だったのです。父は席を譲ってもらい、母も途中から座れたと言っていました。
モノレールに乗っている間も、間に合わないかもしれないと、私は気が気ではありませんでした。父を急かしながら、やっと離陸直前に飛行機に乗り込むことができました。
鹿児島空港につくと、両親はトイレに。ところが、いくら待っても父が戻ってきません。まさか…倒れた!? 探しにいくと、片時も手放さない杖を床に置き、両足でしっかりと立ち、夢中でビデオカメラの撮影をしている父の姿がありました。しかも、なにやらBGMが……。カセットテープに録音した音楽を流しながら撮影していたのでした。私達の心配をよそに、マイペースな父に文句を言いました。
いろいろ不安な旅行でしたが、往きに、「インディー・ジョーンズ」なみの大冒険をしたので度胸がつきました。ビデオ撮影という生きがいがあるうちは大丈夫! 要支援3との珍道中、次はどこに行きましょうか?