「自分が思っていることを、ステージで語ってみましょう!」 私が教えているふたつの教室で提案してみました。すると、 「とんでもない!人前で話すのが苦手だから来ているのに。」 「緊張するし、何を話したらいいのか見当もつきません。」 という返事ばかり。
そこで、"ありがとう"という気持ちを、具体的な出来事やエピソードを盛り込んで作文に書いてもらいました。すると、アルツハイマーの母は"ありがとう"という返事を繰り返すばかりという『母の口癖はありがとう』や、『最後の言葉を言えなかった母』『あなたのために生きるよ』…など、どれも心に染み入る素晴らしい作品ができました。
作品が書けたのだから、発表を。9月14日、武蔵野スイングホールで「村松真貴子とともに~朗読と心を語る夕べ~」を行うことに決定。生徒さん達も覚悟を決め、一生懸命「語る」練習をしました。私は、それぞれの話に合う音楽を選び、内容に添った写真や絵をスクリーンに映し出す作業に悪戦苦闘。耳も目も楽しめるステージにしたかったのです。寝ても覚めても演出のことが頭から離れません。
いよいよ当日、午後1時に集合。緊張した面持ちでリハーサルが始まりました。「ステージに上がるのは、高校の卒業式以来!」「ステージにあがるのもスポットライトも初めてだから心臓麻痺おこしちゃうかも!?」プレッシャーと戦いながらも、リハーサルは無事進行しました。本番用の衣装に着替え、午後6時半開演。舞台の袖で出演者一人ひとりに声をかけ、笑顔の練習をしたり、一緒に深呼吸したりしてステージに送り出しました。皆、リハーサルより落ち着いて本番をこなしています。
午後9時、無事終了。「笑ったり涙したり、あっという間の2時間半でした。来て良かった!」「皆さんの思いが伝わってきて、泣けて泣けて…感動しました。」などと、来場者が次々と声をかけてくれました。
初めてのステージを終えた82歳の女性は、「まさかステージでスポットライトを浴びて話すなんて思ってもみなかった。長生きして良かった。」「会場の人が自分の話にドッと笑ってくれたときは嬉しかった。癖になりそう!」「PTAでも話せなかった私が、大勢の人の前で話せたなんて夢のようです。自信がつきました。」と、それぞれ興奮気味に話してくれました。
"新しい自分に出会うこと"それが今回の目的です。皆の晴々とした笑顔が、私の心を次のステージへと向かわせるのでした。