右ターンのときは、左足を突っ張らずに膝を曲げて、首は右に倒さないようにしっかり立てて……あれっ!右ターンってどっちだっけ? 自分の体なのに思うように動かない!"スキー検定2級など朝飯前"と思っていた私は、浅はかでした。自分では20代のつもりでいても、体力、筋力、更に気力さえも衰えていることを思い知らされました。
縦2センチ、横1センチくらいの小さなバッジ。白地に2と書いてあるスキー2級のバッジは上級者の登竜門。これを手にしたくて、去年も数回バッジテストを受けましたが、不合格。合格した女性がバッジにキスする姿を見て、思いは募るばかり。
この冬、思わぬ病気で入院して出遅れた分を取り戻そうと、休みのたびにスキー場に向かいました。シーズンも終わり頃になって、やっと苗場スキー場で2級のバッジテストを受けることに。大学生の息子も一緒です。高校でスキー部だったので私より上手ですが、バッジテストは初めてです。親子で合格したら最高!などと、気楽なことを考えていた私ですが、春の吹雪の中、雪が重くて全くお手上げ状態でした。息子も不合格。バッジがピューンと雲のかなたへ飛んでいってしまいました。
バッジテストは、アナウンサー試験よりも緊張する。なぜ受からないのだろうと言うと、息子は、 「喋りすぎなんじゃない? もっと集中しないと受からないよ。」
なるほど! 周りの人につい話しかけてしまい、いつの間にか以前からの知り合いのようになっています。
もうスキーなんかしたくないと、くじけた私でしたが、立ち直りが早いのも私の取り柄。1週間後、群馬県の玉原スキー場で再びチャレンジ。息子の言葉を肝に銘じ集中するように心がけました。深呼吸して心を落ち着かせ、右ターンに気をつけて滑りました。結果は……合格! やっと手にしたバッジ。嬉しくて嬉しくて、すれ違う人ごとにバッジを見せたくなりました。
一緒に受験した人が、「これで息子さんに自慢できますね」と、声をかけてくれました。やはり私は、どんなときでも話さずにはいられず、実はリフトに乗るたびにお喋りしていたのでした。
我が子にスキーを教える日を夢見て励むお父さん、仲間は皆ボードなのに、スキーの奥深さに目覚め一人でスキー場に通う青年、若い人に混じってバッジテストにチャレンジする老夫婦・・・・・・。何気ない会話の中に、感動や共感がいっぱい! さあ、次は憧れの1級のバッジだ!