(ご注意)ガ行鼻音の発音記号を表示できませんので、当該箇所は簡易的に赤い文字にしました。本来は「ガギグゲゴ」の点々の部分を〇にしたものです。
美術館で絵の説明を聴こうとイヤホンガイドを借りたら、音声を担当している人は“ガ行鼻音(びおん)”が発音できない人でした。それが気になってイライラし、説明を聴くどころではありません。「ガギグゲゴ」という濁音を、鼻にかかる柔らかい音で発したものをガ行鼻音といいます。発音記号では「カキクケコ」と書きます。日本語の美しい響きを構成する大事な要素です。
単語の最初の音が「ガギグゲゴ」だったら濁音でいいのですが、2音目以降だったら鼻音になります。音楽は「オンカク」、入学式は「ニューカクシキ」、株式会社は「カブシキカイシャ」になります。プロだったらできて当たり前なのですが、最近はアナウンサーでも発音できない人がでてきました。ガ行鼻音も関西の共通語には無い発音なのです。ガヤガヤ、ゲラゲラなどカタカナや数字は濁音でいいのですが、「十五夜」や「七五三」などのように単語に組み込まれた場合は鼻音になります。
ガ行鼻音と同じように、アクセントも揺れ動いています。英語は強弱アクセントですが、日本語は、どこを高く発音するかという高低アクセントです。皆さんは「4月」と言う場合どの音を高く発音しますか? 「シ」は低く「カツ」を高く発音するのが正解なのですが、最近は「シ」を高く「カツ」を低く発音する人が急増しました。2月も同様です。これは関西の番組が全国放送されるようになった影響です。日本語はアクセントの違いで意味が異なるので注意が必要です。雨は「ア」を高く発音しますが、飴は「メ」を高く発音します。
気になる言葉はいろいろありますが、「やばい」や「超」もそのひとつです。おいしくて感激したときに「やばい!」「チョーうまい!」で表現する若者が増えました。日本語には「この上なく」という素敵ないい方もあるのに残念です。「ありがとう」と言われたら「どういたしまして」、「了解」ではなく「かしこまりました」と使ってみるのも、たまにはいいのでは…。携帯電話のメールでは「かしこまりー」と略されるようですが、これも若者が作り出す言葉の文化なのでしょう。もっとも、政治家がお詫びのときによく口にする「遺憾に思う」も、他人ごとみたいで反省の念が感じられないので、若者だけを責めるわけにはいきませんね。
日本語の使われ方は多数決の論理で動いていきますから、アクセントもガ行鼻音も、私たちがどう使っていくかにかかっています。私のように本来の発音を「守りたい」勢力と、「どうだっていいじゃん」という勢力の戦いです。口うるさいことを言っていると思われるかもしれませんが、あなたはどちら派ですか?