「東レパンパシフィック予選のチケットがあるの。見に行かない?」
友人に誘われ、東京立川市の会場へ向かいました。10時開場に間に合うようにと立川駅のモノレール乗り場に行くと、ホームには人が溢れていて、びっくり! 大坂なおみ選手の全米オープン優勝でテニスフィバーが巻き起こったといっても、ここまですごいとは驚きました。1台見送って次のモノレールに乗りこみ、立飛(たちひ)駅で降りるとプラカードを持った男性が二人立っていました。向かって右側はお寺の催し物の会場で、テニス会場は左側と書かれていました。大半が足早にお寺の方へ向かっていきます。なーんだ、テニスではなかったんだ。
会場に入っていくと、観客は少なく席は選び放題です。予選は自由席なのです。二人ともテニス観戦は初めてです。両選手がよく見えるようにと、ネット脇の一番前に座りました。ブシューッと打ち込まれるサーブは、煙が出るのではないかと思うくらい、予想をはるかに超える速さです。飛び交うボールを、子猫のように右、左、右、左…と見ていたら、気持ち悪くなってしまいました。そこで、首を左右に振らずに見られる所にしようと、サイドコートの最前列に移動しました。ボールボーイのきびきびした動きにも感心し、線審の「アウト―!」という声の大きさにも感動しました。腹式呼吸でなければ出ない、よく通る声なのです。時々こぼれ球が飛んできます。試合にしてはコートが狭いように感じました。1試合終わり、私達は席をキープするためにパンフレットを置き、お弁当を買いに会場を出ました。でも、席を確保する人はいません。チケット3,000枚は完売で当日券は無いという割に観客が少ないので、会場の外に立っている係員に尋ねたら……、なんと、私たちが観戦したドームは下位の選手が出ていて、メインの試合は隣のアリーナで行われているというのです! 道理でお弁当も売っていないしトイレもないはずです。椅子には背もたれもありません。
アリーナ会場に行ってみたら、ほぼ満席。広い会場は熱気に包まれていました。競り合った試合が終わると、アナウンサーが現れて勝利者インタビューがあり、ウイニングボールのプレゼントまで行われました。
ひとりで何本ものラケットや着替えなどを背負って登場し、またコートを去っていく選手の背中は、勝者も敗者もこの上なくカッコ良いと思いました。面白くなかったら途中で帰ろうと言っていたのに、試合が終わっても帰りたくないと思うほど心地よい興奮に酔いしれた一日でした。