初夏のような陽気に心弾む思いで駅の改札口を出たら、手提げ袋がないことに気がつきました。大変だ! 中には、チャリティイベントのチラシとチケット、それにチケットの売上金が入っています。動揺しながら駅事務所に飛び込みました。若い男性駅員は要領が悪く、何度も同じことを説明させられました。私はできるだけ冷静に、西武線を5回も乗り継いできたこと、最初に乗った電車で座れたので、そこに忘れてきた可能性が高いから調べてほしいと訴えました。
その日は会議がありましたが、気もそぞろ。手提げ袋の行方が気になって仕方ありません。帰りも、乗り換えをした駅の事務所に寄り遺失物を確認しました。西武線全体の遺失物は、キーワードを入力することによって検索できるのだそうです。手提げ袋の色や形も、人それぞれ表現が異なるので、考えられる限りのキーワードで検索してくれましたが、見つかりませんでした。
その夜、夫が「お金だけ抜き取って、あとはごみ箱ということもあるよね……」というので、私は眠れませんでした。チラシには、私の写真と名前、電話番号も記載されているので、電話が来るかもしれないと思いながらひと晩過ごしました。
翌朝、まず東京メトロの忘れ物係に電話してみました。途中4駅だけ乗った西武池袋線は、新木場駅行の電車だったので、そこに忘れていたら、地下鉄の東京メトロが保管しているからです。すると、「それ、届いています」と言う答えが! 東京メトロの忘れ物は飯田橋駅に集められるというので、さっそく受け取りに行きました。手提げ袋は、そっくりそのまま私の元に戻ってきました。私が大喜びしていたら、「ここまで地下鉄を使いましたか?」と聞かれました。JRから地下鉄に乗り換えて来たと言ったら、地下鉄の往復分は料金無料になると言うではありませんか! 私はもう一度感激しました。
そういえば以前、JR南武線の車内で失くしたスマホと学生証が、ジャカルタで見つかったという記事を目にしたことがあります。「この電車は、本日をもって南武線の運転から引退し、今後はジャカルタに渡り走り続けます。お忘れ物のないように。この電車との思い出もお持ち帰りいただけたら……」という車内アナウンスで有名になった、あの電車です。シートの間に挟まっていたスマホと学生証が、フェイスブックを通じて本人に戻ってきたというので感激しました。それに比べれば私の手提げ袋はずっと短い旅でしたが、多くの方の善意で戻ってきました。皆さま、ありがとう。