「私、今まで誰にも褒められたことがないんです。大切にされたこともありません。親にもずっと文句を言われ続けてきました。本当にダメなんです!」
怒りをぶつけるようにそう言うと、彼女は泣き始めました。突然の涙に驚きましたが、彼女は前回も講座が終わった後、私に話しかけてきました。彼女が悩みを抱えていることは、一目見た時から感じていました。その人が、2回目の講座の後、私に泣いて訴えてきたのです。
私は、さまざまな人に悩みを打ち明けられます。カウンセラーではありませんが、朗読や話し方教室で教えていると、心理学の必要性を痛感するので、通信講座を受講したこともあります。悩みを抱えている人の心に寄り添うように、話を聞こうと努めています。
彼女は、幼いころから変わっていると言われ続け、最近になって障がいがあることが分かったというのです。「それは大変だったね。でも、それがわかって楽になったでしょ?」と私が言うと、周りの人には隠していなければならないので辛いと言うのです。私の周りにも、彼女と同じ障がいのある人がいますが、皆それぞれ仕事をし、社会生活を営んでいます。決して恥ずかしいことではないと、言いましたが、彼女は受け入れてくれません。家庭環境も複雑なようでした。彼女は、私にもっと話を聞いてほしかったに違いありません。でも、事務局との打ち合わせがあったので、30分程で打ち切らざるを得ませんでした。
「もっと自分を好きになろうよ!今までよく頑張ってきたよね。自分を受け入れようよ。あなたという人は、世界にたった一人しかいないのだから、自分を大切にしないとね!障がいがあることは、恥ずかしいことじゃない。障がいも含めて自分なんだよ!新実南吉の『でんでんむしの悲しみ』という本を読んだことある?他人にはわからないけれど、皆それぞれ悲しみを抱えながら生きているという話だよ。」一生懸命語りながら、私はハッとしました。また、しゃべりすぎてしまった……。
以前、子どもの悩みに耳を傾けるチャイルドラインの聞き手になるための研修を受けたことがあります。子どもが間違っていても、自分の意見を言ってはいけない。子どもが自分で解決策を見つけるまで、じっと子どもの声に耳を傾けることが鉄則であるということでした。これが私には難しく、つい自分の意見を押し付けてしまうのです。今回も、もっと彼女の話を聞いてあげれば良かった!次回、休まずに来てくれるといいなぁ……。