「では、肩をあげて、後ろに引いて、下げてー。もう一度!」
発声練習をする前に、いつもみなさまにしていただく準備体操です。ところが、これをするのが億劫になってしまいました。数か月前から肩に違和感があったのですが、電車に乗ってつり革をつかもうとしたら、肩が痛くて腕がスッと上がらなかったのです。いつもの肩こりがひどくなったのかもしれないと思ったのですが、肩の痛みは増すばかり。遂に右手が上がらなくなりました。着替えはもちろんヘアードライヤーを使うのもひと苦労です。夫に「四十肩になっちゃったみたい」と言ったら、「それを言うなら五十肩だろ!」と訂正されました。
評判の接骨院で診てもらうと、「四十肩ですね」と言われました。五十肩とは違うのか尋ねたら、肩の関節の炎症でどちらも同じだと説明してくれました。だったら、四十肩と呼んだ方が若々しい気がします。いずれにしても加齢によるものには違いありませんが。肩関節を取り巻く関節包や腱板の炎症による痛みで、必ず治るから大丈夫、痛くてもなるべく動かすようにと言われました。包丁も重く感じられるほどの鈍い痛みがあり、夜眠れないこともあります。周りの人に四十肩のことをきいてみたら、案外経験者が多く、3年近く悩まされたり、両腕が同時に上がらなくなってしまった人もいて、驚きました。
そんな痛みを忘れている時があるのに、気がつきました。ひとつは、仕事をしている間です。講演や朗読、講師をしている時は、すっかり忘れています。ただし、黒板を使う時に腕が上がらないことで思い知らされますが……。
もうひとつは、孫の世話をしている時です。1歳になったばかりの孫は、甘えることを覚え、私の足元に来て両手を広げてニコッと笑い、抱っこしてのポーズをするのです。これはたまりません。つい抱っこしてしまいます。
先日、息子夫婦がともに仕事が多忙だというので、孫を4日間預かりました。昼も夜も付きっきりで面倒をみました。私が仕事で留守にする時は、退職した夫が離乳食やらおむつ替えやら孤軍奮闘してくれました。孫が我が家に滞在した4日間は、肩が痛いなどとは言っていられませんでした。治ったのかもしれない…と思ったほど快調でした。
ところが、孫がいなくなったとたん、痛みが蘇り、ベビーシッターの疲れもドッと出ました。孫という良薬も服用はほどほどに、ですね。
仕事と孫、それに時々プールで、なんとかかんとか、四十肩とつきあっています。