先日、マンハッタン・ジャズ・クインテッドの演奏を聴きに行きました。千人程入るホールはほぼ満席で、年配の方ばかりでした。5人がステージに登場し、リーダーであり、ジャズピアニストのデビッド・マシューズさん(77歳)が最後に出てきました。その姿を見て私は驚きました。右手右足が不自由だったからです。右手は肘が曲がったまま動かないようです。どうするのだろう…!?ピアノは、ステージに向かって右側に少し斜めに置いてあり、客席からはマシューズさんの右手は見えないようになっていました。演奏が始まると、マシューズさんの手を心配したことなど、すっかり忘れて聴き入りました。マシューズさんは、ほぼ左手だけで演奏していたのです。ほかの4人が華麗なアドリブを披露し、マシューズさんはそのアシストに徹していましたが、見事な演奏でした。
さらに私が感激したのは、マシューズさんの司会です。ぎこちない日本語で曲の紹介をします。「アリガトーゴザイマス」というひと言にも拍手したくなるのは、人柄のなせる技でしょうか!「ニホンゴハ、ムズカシイデス。トクニ、ジョシ(助詞)ガ、ムズカシイ。オナジコトバデ、オンナノコモ、ジョシ(女子)デスネ。ジョシ(助詞)も、ジョシ(女子)もムズカシイデスネ!」この言葉には、会場から大きな拍手がおこりました。
マシューズさんは、小児マヒで右手右足が不自由なのだそうです。ピアノを弾きたいと言い出した時、私が親なら、右手が不自由だから無理だと言ったかもしれません、でも、「できるよ!」と可能性を信じて応援してくれた人がいたから、ジャズピアニストとして大成し、マンハッタン・ジャズ・クインテッドは、結成35周年を迎えることができたのです。
ふと、友人のダウン症の息子さんのことを思い出しました。彼は、いつも「まきちゃん、かわいいね!」と挨拶してくれるのですが、じつは、小児健診で、この子は4文字以上の言葉を言うことはできないと、言われたそうです。友人は、「話せるようになる!」と信じて、懸命に話しかけました。先日、母親数人を前に一人一人に「かわいいね!」と挨拶していたのですが、最後の人はだいぶ太っていたので、何と声をかけるのかハラハラしながら見ていたら、「その服…いいね!」と言ったそうです。
子どもの可能性を信じることがいかに大事であるか、教えられます。「できる!」と信じることが、子どもの可能性を引き出してくれるのです。それは大人にも当てはまりますね。