新年早々、葬儀のお話です。数年前、都内のある葬儀会社から講演を依頼されました。長生きするための秘訣について話してほしいというのです。葬儀社なのに、長生きしようという内容でいいのかと尋ねたら、「はい、どんな方でもやがては亡くなりますから」と、おっしゃいました。当日「話し方・食べ方・笑顔でつくるあなたの健康」という演題で講演しました。会場に入ってびっくり! 祭壇が造られていて棺まで設置されていました。もちろん棺の中は空っぽです。その前でお話ししたのです。ご高齢の方ばかりで大いに盛り上がり、「来てよかった」「楽しかった」「長生きしようね」と、皆さん口々におっしゃいました。職員がカレーライスを作りふるまって、バザーなどもしていました。お孫さんを連れた方もいて縁日のような賑わいでした。葬儀会社というのは、地域との結びつきが大事なのだと感じたものです。
大正8年11月6日、東京で油問屋を営んでいた渡邊竹次郎という人が、私財をなげうって財団法人助葬会を立ち上げました。大正3年に勃発した第一次世界大戦で、人々の暮らしが困窮し、家族が亡くなったのに葬儀もできないと嘆いているのを、見ていられなかったからです。「社会文化の向上に比例して、貧富の差はますます大きくなった。貧困のまま死亡して、人生の最後の礼である葬儀を営むことができない人たちがいる。私は自らその救済事業を行うことで社会向上に寄与したい」そんな思いから誕生したこの財団は、令和元年でちょうど100年を迎えました。関東大震災で壊滅状態になっても翌日にはテントを張って再開、東京大空襲で事務所が全焼してもリヤカーひとつで事業を継続したそうです。身寄りのない人たちの葬儀も手掛け続け、現在では特別養護老人施設も運営し、高齢者の生き方をトータルで支えています。
名称も社会福祉法人東京福祉会に変わり、令和元年11月6日、100周年を迎えたのです。それを祝う式典と祝賀会の司会を頼まれました。祝賀会には町内会や自治会の方々が多く参加し、台本には「本日はご参加くださった皆さますべてがご来賓です。皆さまのおかげで、この日を迎えることができました」という一文がありました。支えてくれた地域の人たちに対する理事長の感謝の気持ちが込められていました。助けあい、支えあって迎えた100周年、出会いや絆、ともに歩み向上しようという志が、公民館活動に通ずるところがあると感じました。この志がずっと続いていきますように……。