今年いただいた年賀状の中に「お墓を買いました。あとは引っ越すだけです」というご挨拶があり、ユーモアあふれるセンスに感心しました。義父は義母のお墓を作るとき、誰でも入れるようにと墓石には「和楽」と彫りました。今は、おしゃれな墓石の下に義母と共に眠っています。でも、我が家からは遠いので、私たち夫婦が入っても息子にとってはお墓参りも大変です。結婚しない人、結婚したけれど子どものいない友人も大勢います。お墓をどうするか……切実な問題です。
私の実家のお墓は、実家から歩いて3分程の所にあります。裏山を背負うようにして設けられた墓地で、風の強い日には、大きなケヤキの葉のざわめく音が不気味に聞こえることがあります。小学生の時の夏の夕暮れ、学校帰りにお墓でお化けごっこをして遊んだことがありました。我が家のお墓は、ブロック塀に囲まれた角地にあり隠れやすかったので、髪の長い女の子がそこに潜み、裏山から狭い階段を下りてくる子を驚かすという趣向でした。そこにいると分かっていても、どんなお化け屋敷よりも怖かったことを覚えています。帰宅が遅くなり、しかも墓地が踏み荒らされていたので、ひどく叱られ、二度とお墓で遊んではならないと言われました。それから数十年経ち、祖母が他界した時に初めて墓石の下を見ました。そこには絵柄のついた骨壺がいくつか並んでいました。死んだら私もここに入るのかとつぶやいたら、嫁ぎ先のお墓に入るのだと母に言われました。
近頃は、樹木葬や散骨する人も増え、墓じまいをしたという話も珍しくなくなりました。さらにスマートフォンの中でお墓参りをすることができると聞いて驚きました。亡くなった方の好きな場所をスマートフォンに登録しておくと、そこを尋ねた時に、故人の写真やメッセージが画面に流れるのだそうです。お墓を買わなくても、スマートフォンがあればお墓参りができるのです。世の中変わりました。先日、弟夫婦や息子一家と食事をした時、お墓の話になりました。弟達には子どもがいません。息子のお嫁さんの実家も、姉妹で嫁いだために跡取りがいなくなってしまいました。すると、息子が面白い提案をしてくれました。四角柱の墓石の4面に「〇〇家の墓」とそれぞれの名前を記し、くるりと回るようにして、必要に応じて〇〇家を正面にすればいいと。グッドアイデア! まあ、お墓をどうするか考えることよりも、今をどう生きるかということの方が大事なのですけれどね。