6月半ばから「八王子市学園都市文化ふれあい財団」の理事長となり、ひと月経ちました。文化、芸術の振興だけでなく、18館ある市民センターの運営も担当しています。八王子市の人口は56万人、市民センターは公民館のように地域作りの要となっています。就任して間もなく、18館すべてにご挨拶に行きました。2日間で回るので、1館あたりの滞在時間は限られているのですが、ついおしゃべりが弾んで長引いてしまいました。そこは、まるで実家の茶の間にいるような心地良さがあったからです。
ある市民センターでは、「今日はね、これを飲んでもらおうと思って待っていたんだよ!」と、館長さんが自動販売機からサイダーを買ってきてくれました。蒸し暑い日だったのでサイダーはありがたいと思いました。飲もうとしたら、なんだか変です。あれ!?と思ったら、それはゼリーでした。しゅわしゅわではなく、ぷるぷるのサイダーは初めてだったので、大喜びしたのは言うまでもありません。「ほらね、喜んでくれると思ったんだよ!」遊び心のある館長さんです。昨年の台風の時には避難所にもなったそうです。好奇心旺盛で、皆さん笑顔が素敵でした。驚いたのは、館長職はボランティアだということです。地域のためだからとおっしゃる言葉に、頭が下がりました。
別の市民センターには、6年間館長を務め退任することになった宮野光夫さんという方も来ていました。85歳だそうです。どんなことを心掛けていたのか伺ったら、「地域の中ではいろいろなことが起きるけれど、穏便に対処しようと、カッとなっても、ひと呼吸おいて落ち着かせることが大事だと自分に言い聞かせていました。楽しいこともいっぱいありましたよ」と、おっしゃいました。私は知らなかったのですが、財団で「感謝状」を用意していました。それを授与するように言われました。アナウンサーですから、心を込めて上手に読もうと思いました。ところが、私は泣いてしまって途中で読めなくなってしまったのです。宮野さんが涙をためているように見えたからです。いろいろな思いが込み上げてきたのでしょう。これで役目が終わったという安堵感と、一抹の寂しさもあったのではないでしょうか。私が泣くのはお門違いだと思ったのですが、こらえることができませんでした。長い間、本当にありがとうございます!
地域というのは、じつに大勢の温かい気持ちで支えられているのだと実感しました。ふるさと八王子に私も恩返しをしなくちゃ!と、決意を新たにしました。