「最近料理に凝っていて、昨晩作ったガパオライスと野菜炒め」というメッセージと共に写真が送られてきました。「素晴らしい!おいしそうだね」と返信したら、「きょうの夕食は、豚肉のガーリック炒めと、豚肉ときんぴらそぼろ春雨です」と、また写真が……。豚肉ときんぴらそぼろ春雨は、浅葱(あさつき)の緑が鮮やかで食欲をそそられます。
私が驚いたのは、そのメールの送り主が弟だったからです。コロナ禍で在宅勤務が続き、夕飯づくりを始めたら楽しくなったそうです。銀行に勤める義妹は、さぞ喜んでいることでしょう。
我が家は、夫が定年退職し家にいるようになって5年が経ちました。夫はそれまで10年以上単身赴任していたので、お互い自分の暮らし方が身についていました。一緒に暮らし始めると、台所のスポンジひとつとっても自分の好みのものがあり窮屈でした。掃除も夫は掃除機派、私はクイックルワイパー派でした。一家に主婦が二人いる感じでぎくしゃくしましたが、昨年6月から私が毎日仕事に出るようになり、あっさり片が付きました。掃除、洗濯、ゴミ出し、食器洗いは夫が担当することになったからです。元来私は几帳面で、夫はおおざっぱだと思っていました。ところが、食器洗いは私よりずっと丁寧にこなしているので驚きました。さらに餃子の作り方を教えたら、研究に研究を重ね、だれもが舌鼓を打つほど腕を上げました。息子達も餃子を楽しみにしています。
その息子も1年以上在宅勤務が続いています。IT企業に勤めているので、在宅勤務には適しているのでしょう。その間、2人めの子どもが生まれました。会議や打ち合わせがあるときは、仕事部屋には立ち入り禁止ですが、比較的余裕があるときは、おむつを替えたりミルクを飲ませたり、上の子を公園に連れだしたり子育てに精を出しています。しっかり「イクメン」していて、私が子育てしていた頃とは大違いです。あの頃は、夫は仕事が忙しく平日は育児にかかわる時間などありませんでした。
自粛生活で、夫も息子も弟も以前より頼もしくなった気がします。女性の社会進出は進みましたが、男性の生活面での自立の遅れが、男女共同参画社会の妨げになっているとも言われてきました。でも、私の周りでは、家事をする男性が一気に増えたような気がします。やってみると、案外できるのです。夫は家事だけでなく、孫の世話もよくしています。イクメンならぬイクジイです。コロナ禍で、家事や育児に目覚めた男性も多いのではないでしょうか。