「トイ トイ トイ(Toi toi toi)」、ドイツ語で「うまくいくよ」「大丈夫!」という意味です。ドイツでは舞台開演前に緊張をほぐすために「トイトイトイ」と声をかけあっているそうです。「トイ」は英語だと「おもちゃ」、音の響きもかわいらしいですね。
この夏、子どもたちにオーケストラを身近なものとして楽しんでもらおうと「トイ♪トイ オーケストラ」を開催しました。演奏は東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、指揮は藤岡幸夫さんです。私はアナウンス体験の指導をしました。「影アナ」と呼ばれる場内アナウンスをやってみたいとおおぜいのお子さまが応募してくれました。抽選で小学2年生から中学1年生までの5人を選ばせていただきました。子どもを指導するのは久しぶりのことです。しかも皆マスクをしているので表情がよくつかめません。楽しそうでもないし、声も聞き取れない程か細い子もいます。笑顔で原稿を読めば声も明るくなるのですが、マスクを外すわけにはいきません。練習時間は1時間。私は少々焦りました。この時「トイトイトイ!」という言葉が浮かんできました。そう、うまくいくから大丈夫! 子どもたちは緊張しているので、それぞれ良いところを褒めることにしました。するとたちまち5人とも声が出るようになり、元気にアナウンスできるようになりました。
「みなさま、本日は、多摩・島しょ子ども体験塾 日野市・八王子市共同事業実行委員会主催、トイトイオーケストラにお越しくださいまして、ありがとうございます」これをつかえないで読むのは、大人だって難しいと感じましたが、担当箇所を決めて個別練習をしました。皆あっという間に上手にアナウンスできるようになりました。舞台袖のマイクの前でリハーサルをしていたら、指揮者の藤岡先生が駆けつけてくださり「上手、上手、とってもいいね!かわいい場内アナウンスだ。きょうの公演にぴったりだ!」と褒めてくださいました。マスクが表情を包み隠してしまうからこそ、こうした前向きな言葉をかけることが大事なのです。子どもたちはこの言葉に背中を押され、本番も堂々とアナウンスできました。この日は八王子市内の中学校の吹奏楽部との共演や、指揮者の体験コーナーもありました。子どもたちはドキドキしただろうに、「トイトイトイ」と言葉をかけなくても上手に務めていて感心しました。
「トイトイトイ!」皆さんも心細くなったら言ってみてください。きっとうまくいきますよ!