「位置について、よーい、ドン!」
ゴールのテープを切りたくて懸命に走った小学生のころ、「やった! 1番だ!」と思ったら2着の旗を持った上級生がやってきて、「え!?」と思ったことがありました。私の方が絶対先にテープに体が触れたのに後ろの人がゴールを勢いよく走り抜けたので、2着と判断されてしまいました。写真判定などあるはずもなく、悔しい思いをしたことを覚えています。
ところで、皆さんはオリンピックなどの短距離走の着順は、体のどの部分がゴールに達したときに判定するのかご存じですか? 財団が管理運営をしている上柚木公園で行われた「はちおうじダッシュ!」で、その答えを知りました。小学4年生から6年生まで男女別に100mを走るイベントです。参加者を募集したところ、今年は八王子市内に70校ある公立小学校のうち58校から228人の申し込みがありました。上柚木公園の陸上競技場は、日本陸連第2種公認の競技場です。小学生の競走ですが、ゴールにテープはありません。どのように着順を判定するのか審判長の峰尾公次さんに伺ったら、写真判定室に案内してくださいました。
スタート合図のピストル音と同時に計測が始まり、タイムが百分の一秒単位でゴール位置に置かれた電光掲示板に表示されます。ゴールの瞬間を撮影するカメラは、1000分の1秒単位で撮影できるのだそうです。肝心の体のどの部分なのか尋ねると、「トルソー」という答えが返ってきました。トルソー、つまり胴体なのです。いくら手を伸ばしても、足を前に突き出してもダメで、胴体の部分がゴールに達することが判定基準なのだそうです。
この「はちおうじダッシュ!」は今年で10回目。JR東日本ランニングチームの大島唯司監督が提案して始まりました。峰尾さんをはじめとする八王子市陸上競技協会の皆さんや小中学校の先生方、それに協賛企業の方々など総勢65人が支えてくださっています。コロナ禍で規模は縮小しましたが、実施できたのは、そうした皆様のおかげです。本格的な競技場で走ることができるのは貴重な体験です。想像以上に速く、しかもきれいなフォームで走り抜ける子どもたちに拍手を送りました。6年生の競技開始前には、サプライズで小学校の先生方を中心に100m走のデモンストレーションがあり、子どもたちも大喜びしていました。
パンフレットの裏表紙に「つながることが何よりも大切だったんだ。」と、協賛企業であるスリーボンドならではのメッセージがありました。10月の青空の下、人と人とがつながって心弾む一日でした。