しーんと静まり返った場内、紙をめくる音さえも気になるほどの静寂を突き破る開演ベルの音!
私はマイクを手にステージへあがりました。コロナ禍でずっと開催できなかった朗読講座の発表会の始まりです。観客はいなくても、自分たちだけでもいいから発表会をしたいという生徒の皆さんの熱い思いに背中を押され、3月26日に彩の国さいたま芸術劇場映像ホールで発表会を行いました。
コロナ禍での発表会、いつもとは勝手が違います。まず朝礼がありました。舞台スタッフと参加者で注意事項の確認をします。入場者の検温、手指消毒、マスク着用の徹底から始まり、最も大変だったのがマイクの消毒でした。本番だけはマスクを外します。私を含めて16人がマイクを使うので、使うたびにマイクを消毒しなければなりません。試行錯誤の結果、朗読が終わったら、朗読した人が譜面台に置いてある消毒スプレーをマイクに吹き付けることに決めました。この時、スイッチをオフにしないとスプレーの大音量が会場に響いてしまいます。舞台袖には外したマスクを置くスペースも設けました。自分のマスクを間違えたらどうしよう…などと心配は尽きません。
勘が戻るまで時間がかかると思いましたが、本番が始まったら水を得た魚のようにみんな輝いていました。本番用に着替える人もいれば、念入りにお化粧する人もいます。緊張していると言っても、スポットライトを浴びると、じつに堂々としています。平均年齢は70歳以上(?)ですが、学生のクラブ活動のようなチームワークとノリの良さが自慢です。病気療養中であったり、大きな手術をしたり、足が痛い、どこが痛いと言いながらも、みんなの顔を見ると元気になるから不思議です。緊急事態宣言中は長らく会えませんでしたが、おもしろい動画や花の写真などをLINEで送りあいました。支えあい励ましあって乗り越えてきました。人の痛みは自分のこととして分かち合い、喜びは一緒になって喜ぶので何倍も嬉しさが増します。年齢も、育ってきた環境も、背負っているものも異なるのに、心が通い合える仲間がいるということは、なんと幸せなことか!
お客様は少なかったのですが、「良い朗読会だった。もっと大勢に聴いてほしいと思った」と、嬉しいお言葉をいただきました。密を避けるためステージ上は9人までという制約があったので全員での写真は諦めましたが、帰り際、ホールの外で記念撮影をすることに。達成感に満たされて、清々しい笑顔で写真に収まりました。あしたからも頑張れる! 疲れたけれど、心は軽やかでした。