「あ、すみません。そこは自転車停められないんですよ。向こうの駐輪場までお願いします。すみませんねぇ」。
穏やかな笑顔でそう告げるのは、浦和駅前の駐輪場の案内係の男性です。シニア世代の働く場として駐輪場は大人気だそうです。4月下旬に埼玉未来大学入学式で講演を頼まれ、会場に行く途中でその男性の姿を見かけました。いきいきと働く姿に拍手を送りたくなりました。
「埼玉未来大学」は、50歳以上の方々の学び直しや再チャレンジを応援しようと令和2年に開校しました。汗ばむような陽気の入学式当日、会場には300人余りの方々がいらっしゃいました。演題は「話し方・食べ方・笑顔でつくるあなたの健康」です。このテーマはライフワークとして長年取り組んできたもので、高齢者向けに何回も講演してきました。はじめのころは、どこか他人事のように話していましたが、ふと、今や自分自身にエールを送っているような内容だと気がつきました。
文句を言いながら生きるよりは、笑顔で生きたほうが良いに決まっている!でも、夫の言葉にきつい口調で言い返してしまう自分がいます。眠れなかった朝などは不機嫌な顔のまま食卓に向かいます。これではいけないと思っていた矢先、群ようこさんの『小太りのおやじ』に出合いました。『朝鏡を見てこの人だれ?……。そこには背中を丸めた小太りのおやじがいた』というのです。これにはいたく共感しおなかを抱えて笑いました。あなたの体はあなたの口から入ったものでできている、と講演でお伝えしていますが、もしかしたら明日は来ないかもしれないから食べたい物を食べておかなくちゃ!と、都合のいい言い訳をしているので、小太りになってしまうのです。わかっちゃいるけど、やめられない♪ 植木等さんの歌声が聞こえてきます(若い方はご存じないでしょうが)。
言葉は未来を創る道具だから、前向きな言葉をひと言でも多く言ったほうが良いに決まっている。良いことがあったから笑顔になるのではなく、笑顔でいるから良いことがある。そうかもしれない。でも、笑顔でなんかいられないときも多いよね。きれい事ばかり言ってしまう自分を客観的にみている自分もいますが、まあ、人生折り返し点を過ぎて、これからは楽しく暮らしていきたいなと。小太りでもいいから、大きな声で笑う回数を多くしたいなぁ。老若男女共同参画社会、誰かのために頑張る自分でいられるといいなと、心から思っています。