「空とぶはっぱときぬのようせい」。
これは八王子に引っ越してきた兄妹が、絹の妖精シルクと出会い、八王子が織物のまちであることや高尾山がまちにとって大切な存在であることを学んでいくという紙芝居です。東京都で唯一、日本遺産に認定された八王子市の「桑都物語」を理解しやすいように紙芝居にしました。
この紙芝居を私が読んで録音することになりました。コロナ禍前は浅草寺幼稚園の子ども図書館で時々読み聞かせをしていました。アンパンマンなどの紙芝居もよく読みました。子どもたちの反応は正直です。面白ければ、身を乗りだすようにして見入っているのが伝わってきます。
久しぶりの紙芝居は15分程もある長編です。登場人物も多いので工夫が必要です。シルクという蚕の声は、どんな声にしよう……? 絵を見ると小さなかわいらしいお蚕様です。そこで、口元をアヒルのようにしてちょっと舌っ足らずな感じのしゃべり方にしてみました。高尾山に住んでいるムササビは、のんびり屋さんなので、少々低い声でゆっくりしゃべるようにしました。八王子市の「桑都物語」ホームページに紙芝居の動画がアップされているので、時間のある時にご覧いただけると嬉しいです。
先日、その紙芝居を八王子市内の保育園の4、5歳児の前で披露してきました。マスクをしたまま大きな声で15分、なかなか大変です。声が小さいと飽きてしまい、隣の子にちょっかいを出す子もいるからです。
ここで紙芝居のコツをお伝えします。もし途中で飽きてしまうお子さんが居たら、アドリブで子どもたちに話しかけてみましょう。椅子に座って読んでいるときは立ち上がって、子どもたちの顔を見て、「わー、アンパンマン、ピンチだね!どうしようかー?」。すると、「ジャムおじさんを呼ぶー」「アンパーンチでやっつける!」という具合に応えてくれます。また「バイキンマンすき」などと自由に発言する子がいたら、「そうなんだ、好きなんだ」と、受け取ってあげましょう。
たったこれだけのことで、子どもたちはまた集中してくれます。紙芝居は文字を読みながら子どもたちのようすを観察することが大事なのです。読み手と聞き手のキャッチボールなのですね。
「空とぶはっぱときぬのようせい」を読み終わってから、園児に質問をしてみました。
「蚕は、何を食べるんだっけ?」
「はっぱー」
「そうだねー、桑のはっぱだね」
「蚕はお口からどんなものを出すんだっけ?」
「いとー」
「そうだね」
「その糸で何を作るの?」
「おひめさまのきもの」
良かった!しっかり聴いてくれていました。録音と違い、子どもたちを前にすると、シルクのセリフにもつい力が入ります。その場の空気と言葉のキャッチボールが、紙芝居の世界を深いものにしてくれるのです。