高校野球、夏の甲子園が終わりました。仙台育英高校が初優勝しました。インタビューで須江航監督が、「青春は密になることが多いのに、今の高校生はそれが許されなかった。そういう中でがんばってきた全国の高校生に拍手を送ってほしい」と言っていました。この言葉に心打たれました。今の高校3年生は、中学卒業も高校入学もコロナ禍だったわけです。自我に目覚め、友人たちの影響を受ける最も多感な時期を、密にならずに学校生活を送らなければならなかったのです。
私が中高生のころは、休み時間はおしゃべりに夢中。クラブの無い日は放課後、友人たちと一緒に何時間も過ごしました。あんなに長い時間、いったい何を話したのでしょう。帰り道、笑いすぎてみんなでお腹を抱えて道端にしゃがみ込んでしまい、通りかかった人に「大丈夫?」と声をかけられたこともありました。まさに、箸が転んでもおかしいという青春なのでした。
青春は悩み多き思春期でもあります。自分が友人からどう思われているかが気になり、自我に目覚めるときです。中学2年生のころ、明るくていつも面白いことを言って笑わせてくれる女子がいました。林間学校の班分けをすることになり、好きな人同士でグループを作るということになったら、突然ワッーという声が響きました。何事かと思って見たら、彼女が机に突っ伏して泣いていました。「自分はどこのグループにも入れてもらえない。一人ぼっち」と訴えました。人知れず孤独を抱えていたことに驚き、みんなで肩を抱き合い「一人じゃないよ」と泣いたことがありました。
また都大会優勝を目指してバレーボールに青春をかけていましたが、レギュラーメンバーのひとりが、急にお化粧をするようになりました。大人びた雰囲気を漂わせ、放課後になるとさっさと帰ってしまいました。校外の不良っぽいグループと付き合い始めたということを聞きました。「クラブ活動なんてバカバカしい」という言葉と、彼女の冷めた目はショックでした。夏の大会まで頑張ろうとみんなで彼女を説得しました。彼女は戻ってきましたが、都大会は3位でした。
病気で一度はベンチを外れた岩崎生弥君を「みんなで甲子園に連れて行く」とがんばった仙台育英高校のチームメイト。それに応えるように、岩崎君は決勝戦で代打満塁ホームランを放ちました。彼らが強い信頼で結ばれ、心は密だったことがこのシーンからも伝わってきました。
今年も甲子園では、さまざまなドラマが繰り広げられました。感動をありがとう。